「僕のコダクロームその1」
●僕のコダクローム YouTubeより1970年代前半に、ポールサイモンの曲で、「僕のコダクローム」という曲があった。今メロディを思いだせないが、そのころコダクロームは、僕にとって、いや写真をやっている人だったら誰でも、特別な名称だった。
それは(カラーフィルムとブラームスというサイトコラムがある)、前のブログでも書いたが、コダクロームⅡ、KⅡ(ISO25、ASA25)(ケーツーと呼ばれていた)というフィルムのことだった。
今回、ロバート・キャパの撮った50年前のフィルムが公開され、2月に写真展が開催される。
それについては、以前のブログを読んでください。
さて、僕が助手をやっているころ、70年代前半、写真の世界、特にプロの世界では、ほぼ全員が、カラーフィルムはコダックを使用していた。富士、やコニカは、アマチュア用のネガカラーだけで、カラーポジフィルムは、99%コダックだった。当時コダックのフィルムは長瀬産業という商社?が輸入していた。プロのための現像所は、E-6という、内式のフィルムの現像をしていた。エクタクローム、エクタクロームプロフェッショナル、EX、EPR,それらのタングステンタイプだ。そんなとき、外式のフィルムだった、コダクロームⅡ、KⅡは、(ケイツウ)は、横浜にある東洋現像所でしか現像ができなかった。基本的には、Kodachromeと赤く刻印された、紙マウント仕様だった。まる一日現像にかかり、翌日の夕方欲しい時には、横浜の工場まで夜、届けに行かなければならなかった。
しかし、そのフィルムの威力は、すばらしく、なにしろ、50年前のロバート・キャパのとった、コダクローム(ISO10)でさえあの発色だ。しかも退色することもない。
後に、コダクローム64(KR)コダクローム25(KM)、そしてPKRと進化してゆくが、実はKⅡが一番綺麗だったし、発色も安定していた。そのことによって、日に2回の現像が可能のなったと記憶している。
KRに変わってからの、コダクロームは、乳剤番号によって発色が違い、とても難しいフィルムになった。よいフィルムに当たれば、KⅡに負けない発色をしたが、KⅡを知っている人にとっては、次第に違うフィルムを使うことになったのかもしれない。もっとも35mmのフィルムとしては圧倒的に粒状性がよく、他のフィルムには変えられなかった。完全にコダックの独占だった。
僕がプロになったとき、ちょうどKⅡとKRの変わり目だったと思う。記憶では、KⅡを使っていたが、もしかしたら助手の時だけだったかもしれない。
今当時のフィルムを見ても、コダクロームとしてしか書いてないので、正確なことは覚えていない。昔のデータノートを探せばわかるが、倉庫のなかだ。もっとも、KRになってからは、乳剤番号で、きちんと厳選していたので、発色のよいフィルムを使っていた。それがかつてのプロのやりかたで、今のように量販店でフィルムを買うことはありえなかった。だから30年たった今でも、変色はなく、色彩も素晴らしい。
もっとも70年代ぐらいからコダックの内式のカラーフィルムも、画期的に耐久性がよくなり、30年まえのエクタカラープロフェッショナルEPRで撮った写真も、今でもほとんど問題ない、ちょっと見ただけではわからないレベルだ。いや、ぜんぜん問題ないといえる。
コダクロームのブロニー判が発売されたのは、いつ頃だったろうか。
たしか堀内カラーが取り扱った。しかしあまり安定してなくて、成功したフィルムとはいえなかった。220フィルムもあったろうか。
その直後に、フジのベルビアが発売された。粒状性が、外式のコダクロームに負けない革命的なものだった。初期には色が安定していなかったし、印刷側の対応が遅れていたので、使いづらかったが、突然問題なく使えるようになった。しかも、35mmばかりではなく、ブロニーから、4x5、8x10まであった。僕は最初、35mmより、ブロニーのベルビアに魅せられた。特に、その頃は、グラビア写真が多かったので、その解像感のよさは、画期的だった。
35mmは、コダクローム、それ以上はベルビアという時が僕にはあったが、しだいに、35mmもベルビア、そして
その後発売されたプロビアを使い始めた。増感しても、発色、粒状性ともによく、その時点でコダクロームのことは忘れてしまった。その時点が、コダックとフジの逆転の始まりだった。そしてグラビア系のカメラマンは、フジ系、ファッション系のカメラマンはコダックを多く使用していた。それは、フジのフィルムの発色がビビットで、明快な皮膚の色を求めるグラビア系に支持され、コダックのフィルムは色彩が落ち着いていたので、ファッション系のカメラマンが支持したのだろう。
そして時代は変わった。
話がそれるが、僕たちは今でもポラ(ポラロイドフィルム)というが、もうずいぶん前からフジのフォトラマを使っている。フジのポラとなどと、インスタント写真の普通名詞になったポラがそのまま残っている。そのフォトラマも、デジタル時代によって終わりを迎えるのだろうか。
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