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2005.01.31

中尊寺ゆつこ訃報 そして健忘症

中尊寺ゆつこさんが亡くなった。まだ42歳だったなんて。僕は4,5年前、自動車雑誌NAVIで彼女を撮影した。撮影の印象は希薄だけれど、なにせ今資料が見つからない。たしか横浜、外人墓地の近くで撮影したと思う。彼女の車と一緒に撮った。車がなんだったか思い出せない。
その頃、僕の最初の著作、「サイゴンの昼下がり」が出版されたばかりで、僕はいつもその本を持っていた。当時、撮影で気に入った人には、プレゼントしていた。と、僕が切り出す前に、彼女は僕のその本のことを知っていた。僕が今日持っているというと、是非読みたいという。もちろんプレゼントした。サインをして欲しいとのことで、僕はそれまで、タレントの写真集しかだしてなく、自分の本に、しかも知り合いではない、有名人にサインをしたことがなかったので緊張した。ただいつでもサインできるように、朱色の筆を持っていた。
そこに、僕は中尊寺ゆうこ、とサインをしてしまった。ゆうこ、ではなく、ゆつこよ。と中尊寺さんにいわれた。僕はずっと、彼女を、中尊寺ゆうこだと思っていた。中尊寺というだけで、立派な名前だ。だからそのあとも、ゆつこ、となっているなんて全く知らなかった。
まあ、「う」の上の点を取ればよいことだけれど、たしかそのままにしてしまった。いや、それとも太くして、「つ」にしてしまっただろうか。中尊寺さんは、ご主人もまたベトナムに興味があり、いろいろ読んでいるところだといった。うーん、車はベンツだったろうか。思い出せない。それにしても、早すぎる死。残念だ。ご冥福をいのります。

自分の著書にサインをすることは、とても緊張する。それは中尊寺さんを撮ったあとのことだ、某週刊誌で、小泉今日子、竹中直人の二人を一緒に撮影したことがあった。その日は、二人に、「サイゴンの昼下がり」をもともと差し上げるつもりでいた。別にサインをすることもなく、ただ読んでもらいたかったからだ。撮影後、お二人に本を渡すと、突然、竹中さんがサインをしてよ、という。写真を撮ることは緊張しないが、本人を目の前にして、サインをすることはとても照れくさい。
まして小泉今日子様なんて書くことは、緊張する。小泉今日子さんは、かなり昔、雑誌の表紙で2回ぐらい撮影したことがあったが、話をしたことはなかった。彼女の家の、本棚に、いやダンボールのなかでもその本があると思うとうれしくなる。
竹中直人氏は、そのとき初めてだった。彼の妻である、木の内みどりさん(木内みどり、とは違う)が、Gというベーシストと、失踪事件を起こす寸前、僕は彼女のレコードジャケットを撮った。
とてもできのよいアルバムだったので、嫉妬半分、残念でもあった。
その後、写真家の田村彰英のアシスタントをしていた。その頃、代官山の同じビルに田村氏の事務所があった。エレベーターで会えば、会釈するぐらいだったが、そこに木の内みどり嬢もみかけた。僕はあんまり、芸能人と友達になるタイプではないので、いや、美しい人にはちょっと緊張するのだ。挨拶ぐらいしかしなかった。
まあ、そんな話はいいのだけれど、僕は突然、竹中さんにサインをしてくれと、言われたとたん、なんと頭のなかが真っ白になり、竹中さんの名前を忘れてしまった。小泉今日子さんは、考えなくても書けるけれど、竹中さんの、字をわすれたのではない。この目の前にいる、有名な男優の名前を突然失念してしまったのだ。
最初に小泉さんのサインをして、そして僕は、え、字はどう書くんでしたっけと、竹中さんにごまかした。きっと、武か竹で迷っていると思ってくれたと思う。説明してくれて無事書き終わりほっとした。
takenakakoizumi350
WPost 9Feb.1999 Takenaka Koizumi Polaroid 195Camera Polaroid Type665 ネガよりプリント
僕は、人の名前が覚えられない。それは一種の病気だ。撮影前に、今日のモデルの名前を聞いても、撮っているうちに忘れてしまう。はじめのうちは、名前を呼んでいたのに、途中から、名前を呼ばなくなる。
仲のよい友達の名前を忘れることもある。そんなことが、だいぶ前あった。
ある時、寿司を食い、酒を飲みかわしながら、当時時々仕事をしていたスタイリストと二人で、僕の健忘症について笑い話をしていた。
そると突然彼女が、「だったら、私の名前わかる?」ときくのだ。
わからないはずないじゃないか。僕たち友達だよ、と顔を引きつらせた。
そのときも、酔いながらも、頭のなかは真っ白になり、名前がでてこなかった。
僕は冗談ではなく、真性の健忘症だ。これは老化ではない。若い頃からだ。
その後、すっかり彼女にあきれられたことは、言うまでもない。
友達をひとり失ったかもしれない。

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