夜道の撮影とロバート・キャパ
夜道のスナップとロバート・キャパ
たまたま夜、テレビをザッピングしていたら、ロバート・キャパの写真が紹介されていた。
1944年6月Dデイ、オマハビーチ
あれ、ロバート・キャパのドキュメンタリーをこんな時間にやっているのかな、とチャンネルを止めると、伸介の生きる知恵PQなんとかという、クイズ番組だった。ブレたこの写真、撮影も失敗だが、現像マンも失敗して、残ったのが約10コマ、それもどれもがぶれていた。この写真を受け取った、ライフ誌は、この写真のタイトルに何とつけて、話題になったのか?というのが問題だった。まあ、有名な言葉なので僕は当然知っているが、回答者も何人かは意味は同じで、一人だけが正解だった。
この写真は、すでに世界的な戦争写真家として、ナンバーワンだったが、さらにロバート・キャパを有名にした写真だった。小説「ちょっとピンぼけ」にもこのエピソードはでてくる。
ライフ誌がつけたタイトルは「そのときキャパの手は震えていた」だ。苛烈な上陸作戦のなか、キャパは震えながらシャッターを切った。「ちょっとピンぼけ」のなかでは、震えがきて、フィルムをチェンジできなかったと書いてある。そして背後にボートが来たら、無意識のうちに乗り込んでいた、と書いてある。母船に戻ったら気絶してしまったと。
写真は、シャープに写っていればよいわけではない。ブレているからこそ、現実感がある。それを証明するような写真だ。特別、ライフ誌のキャプションがなくても、失敗作ではなく、すごい写真だとわかる。ただ、それはグラフジャーナリズム、絶頂期のライフ誌だったからこそ、発表されたが、日本の雑誌だったら、ボツだったかもしれない。
拙著「ロバート・キャパ最期の日」にも書いたが、キャパのすごさは、戦争を俯瞰することではなく、一人の兵士と同じアングルから戦争を撮ったことだ。なにより、武器も持たず、カメラひとつで、一人の兵士と同じアングルまで降りていったことがすごい。キャパは戦場でも、そうやって人間ひとりひとりの息吹を感じられる場所で写真を撮っている。
●ロバート・キャパの写真が紹介されているマグナムのサイト
さて、話題は変わり、今日の夜の写真。ちょっとボケボケ、粒子も粗い。でもこの写真がピントがぴったり、粒子もでていなかったら、どういう印象になるだろう。キャパの戦争の写真とは次元が違うが、粒子も写真の一部のような気がした。
KissDigitalN 18-55mm
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