アサヒカメラ10月号 その2
July 1970 Fussa Tokyo アサヒカメラ10月号より
実はアサヒカメラの写真の入稿に際し、原稿は銀塩プリントではない。
昔、1980年代に銀塩RCペーパー四つ切にプリントしたものを、スキャニングし、それをデジタルレタッチ(焼きこみ覆い焼き、などなど再調整)して、キヤノンPixus9100で、A3サイズのプロフォトペーパーにインクジェットプリントしたものだ。
印画紙ではなく、デジタルプリントが印刷原稿となっている。ちょっと実験のつもりでもあるが、印刷してしまえば、銀塩プリントもデジタルプリントも同じだというのが僕の持論だからだ。
写真のオリジナルプリント信仰が現在では強いが、印刷物である本や雑誌が現実的には、写真表現のメインの形態だとすると、きちんと印刷再現されればなんでもよいといえる。だから、画質など単純に高画質である必要もない。印刷で再現できるものには、限界やその時代の技術的な制約があるからだ。いやある意味印刷ではなんでもできると言える。なぜならそれは、今われわれが使っている、PhotoShopのような機能がずいぶん以前から、印刷には備わっていたからだ。印刷ではとっくに色調の調整、シャープネス、スタンプなどなど、さまざまな調整がかなり自由にできたからだ。もっとも大量生産しなければならず、簡単にはできないが。
しかしデジタル時代になり、印刷でしかできなかったこまかい調整が、パソコンでもできるようになったともいえる。しかも印刷は網点という、「肉眼」でも見えてしまうものが、デジタルインクジェットでは、銀塩の粒子と同じように全く見えないものもある。
写真にはモノクロとカラーがある。モノクロはフィルム現像から引伸ばしまで、簡単な設備?があればどこでも誰でもできる。その気になれば、お座敷暗室だって、完璧なプリントを作ることができる。しかしカラーはそうはいかない。ネガカラーは比較的に簡単でも、温度調整など、それなりの設備が必要だ。ポジフィルムは、現像は何とかできても、完璧なものを望めば、個人で簡単にはできないといえる。
そして何より、プリントするときに、モノクロと違って簡単ではない。もちろんネガカラーからプリントする写真家が多いが、だからといってモノクロのように、表現をコントロールするのはかなり大変だ。偉いけれど。
それがデジタルプリントはどうだろう。まるでモノクロの暗室作業のように簡便だ。しかも明るいところでできる。カラーもモノクロも同じように、気に入るまで調整できる。
今僕は、来年の写真展のために、昔の写真をプリントしている。それもネガをダイレクトにスキャニングして、パソコンでレタッチをする。それをインクジェットプリントする。そのデジタル原稿が、果たして印刷に適合するかどうかが、今回のアサヒカメラの技術的なテーマだった。もちろんそれは解決されたと思う。
今回は、四色カラー印刷だった。もちろん一色モノクロ印刷でも色調こそ違うが同じだろう。
かつて多くのネガカラーから銀塩カラープリントをしていた写真家が、今は撮影はネガカラーで、そしてそれをスキャニングして、レタッチしそのままデジタル入稿するか、デジタルプリントにして入稿するかになっている。
僕も、ネガのスキャニング、僕の場合はモノクロネガだけれど、基本的にはこれからは大きなフォーマットに限られるが、645、66、67、45は、ネガフィルムで撮って、デジタル処理することになると思う。
だからもっと、モノクロネガ、カラーネガに特化(もちろん複合でもよいが高性能)したスキャナーがでてきてもいいように思う。
やはりデジタルの最大の弱点は、多きなフォーマットが難しいということだろう。理論的には可能でも、経済学として成り立たないし、フォーマットが小さくとも、情報量はじき、8x10フィルムに追いつくだろうからだ。
やはり、銀塩は大きなフォーマットが残ると思うし、残って欲しいと思う。
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