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2005.09.29

街頭スナップ肖像権侵害 その2

hakkeijimareds

肖像権侵害 その1
肖像権侵害の判決がでて、再び2チャンネルでもりあがっている。なんとも、世界は何かが変わった。
被害者は、たった35万の損害賠償で、再びさらし者になってしまった。
と、それなのに2チャンネルのスレを紹介する、ぼくも同じ穴のむじな。
いや、ことはそんな気楽なものではない。2チャンネルの意見は錯綜しいるが、写真家の目から見ると、とても恐ろしく感じることがある。
問題点は
●SEXとプリントされた、ドルチェ&ガッバーナの服を、その女性は買い、お世辞にもよろしくない着こなしで街を歩いていた。ブランド物だから、洒落のつもりでも、(お洒落ってここからきてんだ)、SEXという文字は強烈だ。若くて綺麗な子だったらともかく、差別ではなく、区別だ、本人はどういうつもりで着ているのだろう。街を歩く人の視線はどのように感じていたのだろう。かつてだったら、仲間同士、今日の笑い話ですんだことだ。しかし今はネットの時代だ。マスメディアより、ずっと早く、辛らつに伝播する。
●日本ファッション協会は、日本のストリートファッションを紹介する意味で、街行く人をカメラマンに撮らせている。なぜか、カメラマンは、名前をだしていない。匿名の写真だ。これはカメラマンの責任ではなく、日本ファッション協会の、意識の低さだろう。この写真の著作権はカメラマンにあるはずだ。カメラマンは著作権を放棄しているのだろうか。まるCは、協会にあると歌っている。
●今の、日本ファッション協会のサイトでは、スナップ写真の方法はやめたようだ。きっとこの訴訟問題から改めたのだろう。被写体にサイトに掲載する許可を取っているという。以前はかってに撮り、掲載していたということだろう。写真家の著作物として認めていない写真とは、いったいなんのだろうか。それは撮りかたが変わった現在でも写真家は、写真家として認められていない。写真は以前より格段によくなっている。それなのになぜ、写真家の名前を書いてないのだろうか。どこかに小さく纏めても必要なのに。いい写真をとっても著作権を放棄するとは。今の時代、考えられない。
●このお粗末な事件によって、写真家の町でスナップする、権利!!は大きく後退した。
●ファッション協会が、この女性の写真を載せるとき、当然カメラマンには断りなく、どこかに晒す意味もあるはずだ、もちろん第三者の目、中立的なポジションに立ったふりをしながら、悪い見本として載せたのではないのだろうか。海外にも発信するということは、この国辱的なこんな着方を、平気で紹介したいと思ったのだろうか。
●ここには、撮った人間(カメラマン)と、撮られた女性の関係性はなにもない。だからこれは作品ではない。
言われたから撮ったのだろうし、撮ったカメラマンの感想は、やれやれ、って思っていたかもしれない。
●基本的に商業誌だったら、街頭スナップの場合でも本人の許可をもらう。男性誌のキャッチのような写真でも、いちおうとおりいっぺんでも、許可を取っている。広告では絶対に使えない。
●許可を取らないで撮るのは、事件や、風俗の描写、など、ジャーナリスティックなとき、報道としてだろう。
特にテレビでは頻繁に無許可で、多くの人間を撮っている。アップさえある。しかしこれは、報道の自由、表現の自由、公共性といった、大義名分で撮っている。それでも昔から比べたらずいぶん気をつかっている。
しかし考えてもらいたい。今はだれだってカメラを持っている時代、携帯にだってカメラがついている時代だ。どこにいても写真は撮られるのだ。盗撮のような、プライバシー侵害の写真と、公道を歩いているときの写真は違う。野球場に来た人間に肖像権はないのだろうか。そして、監視カメラは。
●さて。なにより問題は写真家だ。
街頭スナップは、黙って撮ってはいけないのか。そしてそれを無断で発表していはいけないのか。
このことについては、もう何度も書いた。僕はぶれていない。(過去Blogの盗撮、スナップを読んで欲しい)
●ある写真家は、絶対に相手に声をかけ、了解をとってからしか、撮らないという。それはポリシー、コンセプトとしてはよいが、表現の自由としては、あまりせますぎる。こういう風にしか撮らないというのは、その作家にとってだけ有効なのであり、ほかの作家に言うことは創作の死だ。
●ブレッソンもキャパも、木村伊兵衛も盗み撮りの達人だった。そして多くの素晴らしい写真は、撮影者に許可を受けたものではなく、無許可だ。このジャンルを写真は捨てるのだろうか。
●問題は意識なく、載せた日本ファッション協会にある。しかもカメラマンの著作権も認めていない、今も変わらぬ体質だ。このことによって、写真のひとつのジャンルが抹殺されるかもしれない。
といっても、アートとジャーナリズムは、価値観の創造と批評が仕事だ。
どんなにひどい法律でも、全体国家でなければ、戦うこともできる。
あんまりこの重大な問題が、マスコミのなかで問題になっていないのが不思議だ。
やぶへびといい、たとえば再販制度もそうだが、騒ぐともっと悪い方向に行ってしまうという、日本のマスコミの自己規制といった悪い方向にむかってしまうことも問題だ。
●そして、なによりもネット社会の怖さ。この女性は事件となり、35万円の賠償金をもらって、さらに数倍になって晒される現実。本当は、匿名の誹謗者こそが弾劾されるべきなのだろう。
いや、まずは、日本ファッション協会の意識の低さが問題だ。
そして、世界はほんの10年まえとすっかり変わったことを意識しなければならない。
ネットだからOKという時代は、やがてなくなるだろう。
●国際的なネット警察、ネット弁護士、ネット裁判所が近未来にできるだろう。
なんて、SF話になってしまったが。
それでも僕はスナップはするし、発表する。もちろんリスクはあるだろう。それを受けて立つ根性がなければ、スナップはできなくなるかもしれない。

その3 未承諾写真


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Comments

肖像権は(所謂)先進国のなかで日本しかないらしいです。他の国では、街頭などの公の場では他人の姿を撮ってもよく、中傷的・商売的な使用でなければ公開してもよいと理解しています。

実は関係のない相手と付き合っているように写真を合成したり、変形して被写体を醜く見せたりすればわかりますが、撮影された本人が公の場で実際に晒した姿(実際にした行動・実際に着た服)を写真で再現すると、害を加えていないように思います。

しかし、日本の肖像権の法律には「恥ずかしい」という言葉があるかと思います。撮影された人が、「恥ずかしい」思いをすれば、肖像権が発生するかと思います。

そこで、誰かが自分の服・あご・鼻か何かをとって、たまたまその人の体の部位が少し普通でなく、本人にとって見るのが恥ずかしいであれば、恥ずかしい思いをする可能性があります。

上の写真のように、目だけを隠すことは充分でしょうか。写っている人が状況から自分を見分ければ、写っているのが自分の手であって、それが何らかの理由で見て恥ずかしいのであれば、もしかしたら、肖像権の侵害が認められます。

海外出身の私は「恥ずかしさ」に基づく法律がよく分かりません。恥ずかしさを感じるのは本人の勝手で、誉められるときだって恥ずかしくなる人がいます。その「辛い」気分である「恥」をもって、他人の行動を制限することはいかなるものかもっと知りたいです。

Posted by: 武本Timothy | 2007.07.03 05:36 PM

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