肖像権侵害
昨日、赤目線を入れた、この写真に写っている人物の肖像権はどうなのでしょう。もし彼女たちが、肖像権侵害だと訴訟すれば、裁判になるでしょう。この場合、僕は当然彼女たちに黙って撮っているし、しかもノーファインダーという隠し撮り、キャンデットフォトともいえるので、ただの未承諾の写真とは違います。
昨日、赤目線を入れた写真と、今日の写真。どちらに悪意があるのでしょうか。
「不許可」の文字は、僕の自意識です。このコンセプトはアートです。しかし、素朴ななにもない裸の写真こそが、本当の写真でしょう。なぜなら、この写真を見て考えることと、「不許可」の文字の入った写真を見ることは、全く違う印象があるからです。
街の状態、人々の様子の写真を撮ることは、本当に悪なのでしょうか。
例えばこの写真を商業的なものに使用すれば、営利に利用されたとして、肖像権の侵害、利用になるでしょう。
例えば、覗き写真(ピーピング)のように、たとえ公道でも、プライバシーを暴く覗き、ローアングルから下着を覗いたりすることと、肉眼で見えている、公の場所の生態は、同じことなのでしょうか。
例えば、ここに写る彼女たち二人の関係が、問題のある場合、そしてそのことによって彼女たちが、不利益をこおむった場合、どうなのでしょうか。
それでも僕は、町でのスナップを撮ります。きっと、10年後、20年後に無意味な写真にはならないと思うからです。
写真は肉眼では見えない瞬間を、切り取ります。
この情景にしても、実は僕の肉眼でこのように、見えているわけではないのです。この場所、この時間にシャッターを切ったのはぼくです。しかし、カメラに定着した画像は、絵描きの描くような、作品は僕の自意識ではないのです。それは、そこに現実にあった世界の表層の引用です。
僕の言葉でいえば、「現実世界の影」が、がカメラに飛び込み、無作為に、無意識にその瞬間が選ばれたのです。僕がシャッターを切った瞬間なんて、ささやかな意味しかありません。
現実世界の影の光の粒とは、本当に世界のことでしょうか。
僕は、カメラによって世界をどのように見るのか、解釈するかが、欲望であり、僕にとっての表現なのです。
写真は、撮り、そして見ること、そして考えることだと言われてます。
肉眼では認識があいまいな三次元の混沌とした世界を、カメラという、世界を停止させ、二次元化することにより、世界をもういちど、再確認し、そして思考の機会をあたえてくれるメディアだと思っています。
写真が発明されて、160年。それまで人類は、自分自身を客観的にみることはできませんでした。写真によって客観視することによって、多くのことを発見してきたはずです。
そして、人類の長い歴史のなかで、たった160年まえに獲得した、ストップモーションの映像ほど、感覚に影響を与えたメディアはありません。なにしろ、ストップした映像、写真は、人間にとって、例えば記憶作用ひとつみても、特別な能力が人間にあることを教えてくれます。
世界のようすを写真に撮る。多くの先人が作り上げた、スナップ写真の世界。
それがほんとうに、「悪」だったのだろうか、もういちど、よく考えてみようと思っています。
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Comments
>勝手にネットに晒すということが嫌がられたのでは無いのでしょうか。
webの製作の現場で気になるのですが、簡単に削除したり、更新したりできるためか、どうも安易になりがちなようです。僕も含めて…。バーチャルとは、よくいったものです。
Posted by: たろいもたろう | 2005.10.11 03:39 PM
もちろん、肉眼でみるだけではなく、永遠に(?)に残る画像を、無断でネットや、印刷物となることが、しかも、自分を矮小化された、画像を撮られることが問題なのでしょう。しかし、カメラで、まるで武器で狙撃するように照準を合わせられると、不快です。写真はその撮る行為自体も、権力的な力を持っています。
Posted by: alphoto | 2005.10.11 08:34 AM
スナップ写真を撮ることが問題というわけではなく それを勝手にネットに晒すということが嫌がられたのでは無いのでしょうか。
Posted by: Pi | 2005.10.11 12:32 AM
アオザイの女性、名乗って欲しいと思っていますよ。広告で使ったから、モデル料の請求!さあどうしょう。なんて。覚悟してます。なにしろ1994年彼女の歩いている後姿を偶然撮り、何をしている人か、もう一度会いたいと思って、10年以上もベトナムにはまっているので。なにがあっても、もし見つけられたら本がまた一冊かけそうです。
実は顔が見えていたら、広告には使えませんでした。顔には肖像権があっても、後姿にはないようです。
Posted by: alphoto | 2005.10.10 06:43 PM
はじめまして、横木さん
“サイゴンの昼下がり”に魅せられてアクセスしました。
肖像権侵害、著作権侵害、とか特許権と違って無登録制ですから。私は法律上、限りなくグレーゾーンだと思っています。
悪意があるか悪意がないか
その人に不利益を与えたか、どうかということだと思っています。
当然悪意はなかったが、万が一被写体の人に不利益を与えたとしたら、それは過失ですよ。
もし、クレームがきたら計算外の出来事ですから潔く謝罪するで良いのではないでしょうか?
もし、ビジネスで使用して、権利を主張されたら、利益に見合った額をお支払いしたらいいと思うんですよ。
法律は最低限のモラルですから、法律で裁かれるというのはモラルの欠如が招いたことだと思っています。
これからも横木さんには一瞬をバシバシ撮ってもらいたいですね。クレームがきたら謝りましょうよ。そういうたぐいですよ。多くの人は、横木さんの感性で撮って発表した写真には新たな自分を発見して喜ぶと思います。
でも、アオザイの女性が請求に来たらどうします?・・・男としては、そういった実務的な女性であって欲しくないのだが・・・
Posted by: greenpapper | 2005.10.10 03:17 PM