モデル撮影会
●5月28日 名古屋東山植物園でCanonの撮影会の講師をした。
モデル撮影の講師初体験はもう10年以上前、15年はたっていないと思う。
場所は今回と同じ名古屋東山植物園、Canonの撮影会だった。
講師としては、秋山正太郎先生、中村正也先生がまだまだお元気で、僕は一番下っ端の講師だった。
モデル撮影会がどんなものか、おおよそのことは、知っていても、
実は、そんな撮影会に僕はほとんど参加したことはなかった。
それも遠い昔、日芸一年のとき、入っていたフォトポエム研究会というサークルで新入生歓迎撮影会と称して古川庭園でやったのと、写真学科に商業部会とうのがあって、場所はわすれたけどそこで撮影会なるものに参加した。講師がいたわけではなく、モデルを囲んで各自適当に撮った。
1967年5月 最初のモデル撮影 古川庭園
AsahiPentax SP 105mmf2.8
当時のモデルは、普通の人と着るものも違い、まつげ3段重ね、化粧もばっちり、浮世離れしたモデルを見て興奮した記憶がある。そんな芸能人みたいなかっこうで歩いているのは、モデルのようなごく一部の女性だったからだ。
それがくずれてきたのは、ananやnonnoが創刊された、1970年すぎのことだった。日芸の女の子とたちのファッションが劇的に変わった。
最近は、服装や髪型は、タレントやモデルより一般の女性のほうがセンスがよいぐらいなので、撮影会のモデルの衣装を見せてもらうと、チープだったり、感性がなかったりで、びっくりする。
「これで写真を撮るの?あなたね撮影会って、非日常なんだから、そんななんでもないパンツとTシャツもってくるなよ」
なければ、せめて露出度のあるもの、マイクロミニ、ホットパンツ、と工夫が欲しい。でも皆貧しく持ってないんだよね。無理しないから。撮影会って、あなたの日常を撮るんじゃないんだねどね・・・。
話を元にもどして、大学1年の夏だったらろう、他の写真学校の先生が、生徒5,6人を引き連れて、
三浦の貸別荘泊まりがけでNUDE撮影するというので、便乗したことがあった。
18歳まだ本物の女性の裸をまじまじと見たこともなく、興奮した記憶がある。
プロの写真家となり、15年ぐらいたってから、ぼくもいつのまにか40代になったころ、Canonから撮影会の講師をやらないかと打診された。あんまり深くは考えなかったが、講師って何をすればよいのか分らなかった。でも野次馬根性で受けたた。
なにしろ、ひとりのモデルを大勢で取りまいて撮影する経験は、プロになってからまったくなかった。だから実はとまどっていたのだ。
「こんなんじゃ写真取れないよ」
が僕の本心だった。
モデルにしろ、タレントにしろ、被写体と一対一で向かいあい、コミュニケーションをとりながら撮影するのが、僕の人物撮影のやりかただからだ。
20人から30人、多いときは50人から100人ぐらいが、ひとりのモデルを取り囲んで撮影するなんて、まるで共同記者会見の取材みたいだ。これはどう考えたった女性を撮る、写真家のやりかたじゃない。
僕が女性に限らずポートレイトを撮るときまず場所を決める。場所はよほどじゃないと、具体的なもののことは少ない。
だからどうみても公園という場所で撮ることはめったにない。公園だとしても、手入れされていないあんまり綺麗じゃない、公園らしくないところをかぎまわり、撮るのがすきだ。
まあそれでも女性のポートレイトだったら、日差しがあり、木陰でもあれば、単純な逆光のポートレイトは狙える。それでいいのかもしれない。
撮影会ではなにより一番重要なことは、大勢が撮れるところということになる。
結局、木立の奥ではなく、広く抜けているところにモデルを立たせる。
そこで、モデルがわざとらしく、ポーズをして、作り笑いをし、目線をまんべんなく配る。
それはそれで、キッチュでいいんだけれど、パロディではなく、本気でまじめにそういうふうに撮る経験は僕にはない。
だから撮影会では、僕のもっている撮影テクニックのほんの数%しか教えることができない。
最初のころは、モデルにポーヅをつけていると、声のでかいえらそうな奴が、僕と同じぐらいの年齢の奴だが、
「ねえ、ねえ、先生、その場所だめだよ」
という。40代でも講師としてはそのころ僕はまだ新人だった。
段取りが悪いので、甘く見られているのだろうか。
撮影会の場所探しは、普段の趣味とは違うところを選ばなくちゃなないので悩みが多いのだ。
それは今でも同じだ。
そのとき僕は、民家の縁側にモデルを座らせ、柱によりかかるように指示していた。
「どうして?」
僕はその男に聞いた。
「だって、そんな柱に寄りかかったら、頭からツノがでているようになるじゃない」
「?ハア?・・・・でもツノじゃなく、柱にしか見えないよ、ちょっとアングルを工夫すればいいんじゃないの?」
「だめだめ、そういうのは、コンテストでは通らないだよ」
たいてい撮影会は、そのあとコンテストになっている。
ああ、これがアマチュアの世界にある迷信なんだなと思った。
僕の大好きな「日の丸構図」もそうだ。
結局僕はその馬鹿オヤジを無視していたら、どこかに行ってしまった。
僕は、撮影場所を決め、モデルに指示をしてから、他の先生の講師ぶりを見学することにした。
ほとんど何にも指示をせず、成り行きに任せる先生が多い中、一色一成先生と大山謙一郎先生の二人がとても印象的だったら。特に一色先生は飛び回り、ボディアクションで力いっぱい、皆の歓声を受けながら、楽しくやっていた。
そう、撮影会は楽しむ場所なのだ。撮る側も、講師も、楽しめばいいのだ。
えらそうに、するっていうのも手だ。まあ、実際えらくなくちゃいけないのだけれど、
俺は売れっ子カメラマン。なんでも教えてやるぜ。っていうスタンス。意外とそういう写真家もなぜか人気がある。
といってもそれ、それはキャラの問題だ。
飛び跳ねるとこもできず、かっこうつけることもできな僕にとっては、かなり難関のしごとだった。
それに今だから言えるけど、僕はアマチュアカメラマンと写真の話をするのが大嫌いだったのだ。
僕はあんまり、カメラに興味がないし。話す接点がない。ふたこと、みこと話すともういらいらしてくる。
それがいつごろからだろうか、アマチュアカメラマンのことが突然好きになった。
まあ、プロだアマだと考えなければ、いいことだったのだ。プロ、アマと一線を引いたほうが、楽だと思うカメラマンもいる。でも、僕はそういうことを取っ払ったほうが、普通に話せるので性にあっている。
モデルがあんまり可愛くなくて、撮影の場所がよくなかったりすると、2人のモデルに5、6人のカメラマンになったりする。そんなときは、一対一で撮らせたり、まあ、結局僕の個人的なファンなのかと思い、楽しく雑談することになる。
今回、午前も午後もモデルはよかった。だから途中までは、自由に撮ってもらい、休憩の前ぐらい同じ場所で長く撮った。するとだんだん人が減ってくる。休憩が終わると、ちょどよいぐらいの人数になっていたので、それまで別々にポーズしていたモデルを、2人一緒にして撮ってみることにした。
モデル二人撮り、ファッション誌の定番だ。
ひとりでポーズさせるより、二人ならぶと二人の関係性ができて、少しナチュラルになる。
まあ、撮影会のコンテストには選者がいるので、その人の趣味が反映するから、どうなるかわかんらないが、まあありきたりじゃない写真が撮れたはずだ。
本当はモデル撮影は、少人数で、できれば一対一で撮るのが絶対よい。
しかしお祭りとしてきれいなモデルさん、外人モデルを撮るのは、経験としては楽しいはずだ。
カメラメーカーの撮影会が年々減る傾向。
おじさんばかりではなく、若い女性なんかも来てくれるといいかな。
多くのプロの話を直接聞ける。質問すればなんでも教えてくれるはずだ。
たしかにモデル撮影会は、ちょっとアナクロな、変態イベントだ。
はたから見てると、異様だ。
でも写真を撮る根本的な、「楽しむ」こと、そしてさまざまな人と、特に現役のカメラマンと「直接会う」という、一番大切体験ができる場だ。
得ること絶対にあるので、参加しましょう。
・・・・こんなこと撮影会の前に言うべきかもしれないが、これからもいろいろあるから。
撮影会は、作品を作る場じゃないかもしれないが、何かを学ぶ場であることはたしかだ。
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