書店の人はどう思っているんだろう。
■2006年12月1日、「あの日の彼 あの日の彼女」TEACH YOUR CHILDREN 1967-1975横木安良夫写真集が、出版されることになりました。
●それは、とてもうれしいことです。自分でも拍手喝采、「幸運」だったとか、人との出会いでここまでこぎつけたとしか言えません。
というのも、出版にこぎつけるまでの紆余曲折、障害、等々、・・・・アートの写真集は現在、簡単に出版できる状況ではないからです。
●現在大手の出版社は、アートとしての写真集をほとんど出版していません。かつては、文化活動として出版した時代もありましたが、今はそんな時代ではないのでしょう。
----写真集というとタレント写真集というニュアンスが感じられます。実際日本に流通している写真集のほとんどは、タレントやヌード系の本でしょう------
純写真(fine photo)としての、写真集を今、出版しようと思ったら、自費出版にするか、作家がかなりの部数を買取りするしか不可能でしょう。
●写真集を作るには、かなりのコストがかかります。当然、撮影にかかった費用やプリントの費用を除外したとしても、デザイン代、印刷代、製本代と、文字系の書籍から較べれば、かなり割高、ものによっては数倍にもなります。
例えば、その写真集がブレークして、何万部も、何十万部も売れるなんてことは、タレントの写真集やエンターテイメント系の写真集以外ありえないでしょう。
そういう意味では、もっと少ない投資で、もしかしたら何百倍にも、化ける可能性のある活字系の書籍は、今のしくみでは有利でしょう。雑誌のように出し続けることのできる仕組みができています。
そういう意味では、アートの写真は、最大売れても数千部でしょう。出版社が敬遠するのもうなずけます。
●実は、アートとしての写真集は、コストが高いから、出版が困難なわけではありません。
答えは簡単、売れないからです。
売れない理由はいろいろあるでしょう。
つまらない。高い。ひとりよがり。
価値がない。・・・・だから退屈なものがアートだと思い込んでいる。
●もちろんそういう一面もありますが、実はそんな理由ではないと思ってます。
なぜ売れないか。
それは、買いたいと、そんあものを欲求したとしても、おいそれと、売ってないからです。
正確に言えば、買いたいと思う場所が、少ないからです。
コンビニで、アートの本を買う人はいません。そんな気分じゃないからです。
アート買う、鑑賞するには、それなりの気持ちの高ぶりが必要です。
日本の書店は、そんな高額の商品を売る、イメージ作りがほとんどありません。
そして、何よりも、日本の特殊な販売制度があることもあります。
再販制度には、かなり有効な面もあります。価格の安定や、専門書などの安定供給です。
デメリットは、書店それぞれの自由度がない点です。全国画一的です。
●海外の書店と、日本の書店がどうちがうかというと、日本の書店はかなりの面積で雑誌を売っています。
それも数え切れないさまざな種類の雑誌があります。これは世界中にどこにもありません。
それは、日本の特殊な文化ではなく、制度の問題です。
再販制度の最大のメリットは、大部数、低価格、スピードです。
その膨大な量の雑誌、そして書籍を、効率的に流通、販売するしくみです。
それは新しい情報をそれも膨大に、瞬時に受け手に届ける、素晴らしいシステムでした。
しかし、今なぜ出版構造不況になっているかというと、その役目が、携帯電話やインターネットに変わろうとしているからです。かつては、雑誌の独壇場でしたが、今やかなり悲観的です。
●本のなかで、一番再販制度に向いていないのは、部数の少ない、価格の高いビジュアル本です。ビジュアル本のなかに、アート系の写真集を僕は分類しています。
●ところが、海外の書店のことをまた語りますが、海外の書店は、まるで洋書屋(?)のように、ビジュアル本であふれています。もっとも日本のようにたくさんの書店はありません。ささえているのは英語圏という商圏が大きいこともあるでしょう。
●海外の書店では、20ドルから30ドル、40ドルのハードカバーのビジュアル本がたくさんあります。
これは聞いた話ですが、BOOKフェアのようなところで、書店がこれから出る本を買いつけすることができるからだというのです。
●ビジュアル本の最大のメリットは、現物見本を手に取ればそれが売れるかどうか、すぐに判断できるからでしょう。それは販売する書店側の自己責任です。ですから出版社は、どんな小さなところでも、自分たちで発行部数が読めます。そういう意味では、小さな出版社が時間をかけて本をつくることが可能なのでしょう。
●もっとも、出版社より書店自体の体力が必要かもしれません。
書店は在庫をかかえこまなけらばならないからリスキーです。
かつての日本には、そこらじゅうに小さな書店がありました。しかしいまや交通の発達した時代、本や雑誌を買う人は圧倒的に大型書店で買うことになったのです。
全国津々浦々、新聞や、郵便のように書店がある意味がなくなっています。メインの雑誌だったらコンビにのほうが便利でしょう。
●いまや、インターネット時代になり、世界はグローバル化し、情報は限りなく安く、無料になりつつあります。スポンサーつきの情報を伝達するならフリーペーパーで十分です。
そういう意味で、これからの書店はある種、方向転換しなければならないと思います。取次ぎによって配本されたものだけでは、やっていけないでしょう。
これからは、情報としての本ばかりではなく、存在物としての書籍をどうやって売ってゆくのか、新しい仕組みを作る時代なんだと思います。
●日本は、このビジュアル本を売る仕組みがまだできていません。
体力があり意識の高い書店がアート本のコーナーを持ち始めていますが、実際はごくわずかです。
日本全体を見ても、100店舗はないでしょう。実際はその半分もないかもしれません。
書店の人たちに、価値のある本を、写真集、捨てることのできない、見たら中古店に持ってゆく気のおきない、愛着を持てる本に、目を向けてもらいたいと思っています。
アート本、写真集とはそういう本です。
そういう意味で、僕のこの写真集は、書店でもきちんと売って欲しいって願ってます。
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