写真のトリミングとフレーミングとCReCo
29Dec.2006 Tomigaya Tokyo Japan GRDigital BW Mode Jpeg CReCo
写真を見ていて、なんだか気持ちが悪い。下の写真だ。飲みすぎで気分が悪いわけじゃない。自分が撮った写真、それを昨日UPした。GRDで撮られたその写真、オリジナルからトリミングをしている。理由は、GRDをモノクロでとる場合、通常は2:3のアスペクトに最初から設定していることが普通だからだ。カラーは通常のアスペクト比。ただこの日は、カラーとモノクロ混在していたために、2:3になっていなかった。だからCReCoするときに、2:3にトリミングした。ところが、単純に等分に天地を切ると、足が切れてしまうことになる。なので、下を基準に天(空)の部分だけトリミングして、35mmアスペクトにしてみた。ただ最初から2:3で撮っていれば絶対に足元までバランスよくフレーミングしているはずだ。
GRDは、28mm相当のワイドレンズだから、いってみれば画面の周辺、この写真でも足元はレンズのディストーションで伸びている。
ワイドレンズの構図は微妙でレンズの周辺の歪みが、全体の印象に影響する。(その点、望遠レンズはトリミングをしても丈夫だ。パースペクティブがあまりないからだろう。
この場合天だけを切ったことにより、左側のタクシーの存在と、その背後にある電信柱が、奇妙に主張はじめ、全体のバランスを崩してしまった。ならばと、左側をトリミングしてみた。主題からはずれて邪魔だと思ったからだ。でも2:3の写真を単純にトリミングしたのではなく、オリジナルの写真から左部分だけをトリミングしてみた。
僕は基本的に、撮影後トリミングはほとんどしない。もちろん印刷原稿としては、デザイナーにトリミングされることは覚悟している。特に、商業的な写真(広告でも雑誌でも)の場合は、かなり大胆にトリミングされていも気にしないことが多い。まあ、それでも若いときには、トリミングされることに敏感で、デザイナーとしょっちゅう衝突した。が、今は、文字が入ったりして、それで商業的な作品として成立するわけだから、気にならなくなった。ただ、写真だけを提示する場合は、ほとんどトリミングすることはない。撮影のときに、どんなアスペクト比、そしてフレーミングするかは、最初から考えているのが普通だ。もちろんそんな作業は直感だが。
ところが、邪魔だからと、単純に左を切っただけでは、やはりバランスが悪い。パースペクティブが狂っている。たしかに、コートのリボン(ベルト)がこの写真の主題だとすると、明確にはなった。しかし明確すぎて、かえってつまらなくなっている。この場所で偶然見つけた感じが失われているだ。
このあたりが、トリミングの一番難しいところだ。左を切るならば右も切ったほうがよい。撮影でありえるフレーミングのほうが、自然だ。それは、長くワイドレンズを使っていると、自然に身につくワイドの世界なのだ。
僕はワイドレンズが好きだから、なんとなく、ありえないワイドの世界に違和感を感じたんだと思う。
下が、オリジナルの写真だ。他の写真は見ればわかるとおりCReCoして、濃淡の調整をしている。オリジナルのこのなんにもしていない写真のよさもあるが、僕はあまり、クリアーなものより、ちょっと汚れた絵がすきなので、大幅に原画を破壊することになる。トリミングには敏感でも、暗室作業、デジタルだったら明室作業、僕のことばでいえばCReCoだが、いかに現実を、異化するか、いってみれば新品の枕より、使い込んだ枕が寝心地がいいのに似ている。銀塩モノクロプリントも、好きなように焼く。だからデジタルも同じ考えだ。
それで、結論としては、オリジナルのフレーミングそのままを、CReCoすることにした。一番上の写真だ。
不思議なことにオリジナルは、左側のタクシーも、電信柱も、必然で、さして気にならないし、この写真の空間に深みを与えている。タブローではなく、現実にあったことの、引用が強調されている。めでたしめでたしなのである。と、このように、写真家にとって、世界をどのように切り取るか、そしてレンズを通した世界は、現実とどんなかかわりがあるのか、そのかかわりこそが、絵画と根本的に違うものだと思っている。絵で描けるものを、わざわざ写真に撮る必要なんてないのだ。デジタル時代になり、広告は、ほとんど、合成写真だ。映画を見ても、CGばかりである。その気持ち悪さは、きっと映像世界の持っている、「現実世界」といかに向かい合っているかが、欠如している退屈さなんだと思う。
結論としては、オリジナルの写真をCReCoした写真が、やはり一番よかったということになった。
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文・角田光代
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