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2006.12.08

田中長徳、藤代冥砂、ハービー山口 感想

●12月4日(月)pm6-7 田中長徳Tanakatalkshow
photo by 漂流者始まる直前、右側と左側のどちらに座るの?と長徳氏はぼくに聞く。どちらでもと答えながらも、僕は上手の椅子を選ぶ。彼は座談のプロでもある。マイクを使うといったら、いらないといった。しょっちゅう人前で話している。早口で声もでかい。僕も声が大きし、早口だが、長徳のように、次から次へと話なれているわけじゃない。まあ、ひとりで話していれば、だんだん調子がでてきて、かなり早口になるが。
長徳氏は実は人嫌いだという。だから写真は、特に昔の写真は被写体との距離が遠い。
長徳氏のことは、昔から長徳と呼び捨てにしていた。結局、チョートク、アラオでトークショーは通すことにした。実は彼とちゃんと話したことはほとんどない。そこで今日はカメラの話ではなく、コンポラの話をしようということになった。実は彼はカメラマニアのように思われているが、実は撮影おたくなのだ。圧倒的にカメラのことより、写真を撮ることの話のほうが好きなようだ。僕はカメラには全然興味がない。カジュアルだったらなんでもいい。車も運転することが好きで、写真は撮ることが好きだ。
長徳は、高校生の頃から写真を撮っていたカメラ少年だ。大学時代にすでにニコンサロンで個展をしている。その後デザインセンターに入る。その翌年僕はセンターでアルバイトの暗室助手をやった。そのとき初めて長徳とであったわけだ。彼とお昼に銀座のライオンにランチに行くとき、彼はオリンパスワイドで、あちこちパチリ、パチリと撮る。それがとてもかっこよく思えた。スナップの達人だ。僕はバイト中は、ヤシカエレクト35mmで撮ったいた。ときどきニコンFや、あるときはブロニカを使った。長徳は声楽家とセンターにいるときに結婚した。式は目白にあるカテドラル教会だ。多くの若いカメラマンがあつまった。僕も写真を撮った。長徳は、あれだけたくさんのカメラマンがいるのに一枚ももらえなかったと、カミさんがなげいているといった。そのひとりだった、僕はプレゼントするつもりで結婚式のスナップでミニ写真集を作った。それなのにプレゼントすることはなく、そのうち長徳はウイーンにカミさんに拉致されいなくなった。ときどきその結婚式のミニ写真集はでてくることがあったが、そのときはあまり長徳と懇意ではなく、そんな昔の写真をあげても迷惑だろうと放置していた。今回写真集をだすときに、昔のコンタクトプリントを見たら、そのときの写真がたくさんあった。そのうちプリントしてあげないと。
僕は長徳の昔の写真が好きだ。明らかに僕とは撮り方が違うが、対象は似ているともいえる。あの時代はかれだってデモの写真を撮っている。それがなんともフォトジェニックな写真だ。僕にとってのコンポら写真とは、田中長徳の写真だった。
彼は最近、「東京今昔」という写真集をだした。今の写真と、1966年ごろの写真を構成してある。でも圧倒的に昔の写真がいい。そんなことは長徳も知っていて、実はこの本は、これから出す60年代の写真の予告編らしい。それは500ページぐらいにもなるらしい。とても楽しみだ。皆がもっとこの時代の写真を発表すればいいのに。
漂流者さん Photo&text レポート

●12月5日(火) 藤代冥砂 pm7-8
Fujishirotalkshow
photo by 漂流者

藤代冥砂とは、初対面だった。午後7時、打ち合わせをすることもなく、一瞬挨拶をして、会場の席についた。そして再び挨拶をする。彼は僕と同じ千葉県生まれだという。船橋だという。僕は市川、そしてこれも偶然だが、この写真集の始まった、1967年に生まれている。ということは、角田光代さんと同じ年だ。大学卒業後、五味彬氏の経営していたアンティックショップでバイト、そこで写真に興味を持ち出したという。アシスタントをやったあと、フリーにしばらくはファッションやミュージッシャンを撮っていた。その後、海外放浪をすることになる。それは子供の頃から放浪癖があったからだといった。日本に帰ってからは脚光を浴び、売れっ子カメラマンになる。
彼とはなしていて、感じることは、選ぶことばがとても美しくて、文学的だ。彼の文章を読むと、ものすごく文才を感じる。以前はワープロだったが、今は手書きにしているという。リリー・フランキーさんの影響だと言った。僕は原稿用紙恐怖症だったらか、ワープロになって初めて文章を書き出した。だから彼みたいに20代で文章を書くなんて考えてもいなかった。彼のメンタリティはどこか、物書きみたいに思えた。それに性格もがつがつしていない。以前篠山さんに、君は文章のほうが才能があるねといわれたらしい。実際、妻の田辺あゆみを撮った写真集、「もう、家に帰ろう」は、ひとつひとつに短いことばがついていて、そのことばがなんとも美しい。
藤代は、雑誌が好きだといった。彼が発する美しいものを、多くの人に見せたいと。だから数万ではなく、数百万のひとに届けたいといった。ぼくはそれにちょっと反論したけど、実は僕だってそう思っている。でももうそんな時代じゃないような気がする。音楽にできて、写真ではなぜできないのだろう。
僕は彼が27歳から放浪をしたこと、一人で旅をしたことにあこがれるといった。僕はそういうことをしてみたいなと思ったことがあるが、実はフリーのカメラマンになったとき、もう仕事がしたくて、したくて、どこか海外に飛び出すなんてことは考えてもいなかった。そのかわり、写真の世界のなかであちこちさまよった。そんな話を僕がすると、藤代君は「そういう横木さんにとっては、それが旅なんですよ」という。「旅」はなにも海外に行かなくたって旅だ。そういわれてみると僕はいつも、ひとつのところに落ち着かず、人生を旅しているのかもしれない。藤代君のひとこと、ひとことは象徴的で、とても文学的だ。文学的というのは観念的であることではなく、写真を撮ることは違った部分で考えているような気がしている。彼のようなポジションの写真家はもっと、もっと写真集をださなくちゃいけない、と僕ははっぱをかけた。
トークショー終了後、近くの居酒屋で肩を寄せ合い、彼はいもしょうちゅうの水割りを飲んだ。今、葉山に住んでいるので、毎日東京にある事務所まで横須賀線で通っている。11時ごろまた飲む約束をして解散、楽しいひとときだった。
漂流者さん、PHOTO&Textレポート

●12月6日(水)ハービー・山口 pm7-8
ハービーさんと知り合ったのは1年ぐらい前だろうか。もちろんそのまえから彼の名前は知っている。何より彼が代官山同潤会アパートの写真集をだしたときに、ちょっとショックを受けた。彼は中目黒に住み、僕は同潤会の目の前の、代官山パシフィックマンションに1979年から16年間事務所を構えていたからだ。だから当然、同潤会は、僕のオープンスタジオだった。僕がおもに撮っていたのは80年代、アパートに入り込み、階段や屋上でずいぶん撮った。そのころはそんなふうに、ぼうじゃく無尽に無許可で撮影していてもなんの問題もなかった。だから僕もタレントやモデルを撮ったほかにも同潤会の写真はたくさんある。でもまとめるといった意識がなかった。それだけだ。
ハービーさんは、子供の頃病気を患っていた。いじめの対象でもあったらしい。中学時代音楽をやった。ブラスバンドだ。フルートだったという。と聞いてぼくはびっくりした。彼がハービーマンから、名前を取ったのことは、知っていた。でもブラスバンドとはしらなかったし、フルートをやっていたことなどなおさらしらなかった。単純にジャズ好きだと思っていた。僕も高校時代ブラスバンドに入り、フルートをやっていた。偶然。
今回いろんな偶然にめぐり合う。でもこのときは本当に驚いた。・・・・病気だった彼は、それがコンプレックスだった。ある日、彼は池上に住んでいたわけだが、たまたま空き地でボールが転がってきて、そのボールを追いかけてきた少女と目があい、彼女はハービーさんに声をかけた。それは今まで見たこともない、美しいまなざしだった。彼は衝撃を受けた。こんな美しい目をした、そして心を持った女性がいる。彼はそれ以来、こんな美しい心を、持つひとを撮りたいと思った。その瞳を、その心を写したい。彼は写真家になろうと思った。それは今でも思っていることだという。誰を撮っても、どんなに有名なミュージシャンを撮っても、その視線を、心を撮りたいと願っている。そんなハービーさんのメインカメラはライカだ。サブカメラがニコン。
ハービーさんの言う、美しい瞳、美しい心を撮りたいというのはある意味とても、ベタでアナクロだ。恥ずかしげもなくよくそんなこと言えるなとも言える。でも彼の場合それは、若い時代からはじまった、彼のコンセプトなのだ。そのシンプルさは、彼の撮った写真、彼の経験したすべてが、それを補強している。そういのって、どこかミュージッシャン的だなと思う。例えば「愛」なんてことば、ある意味死語のようなものだ。それはある特別なシチュエーションのときには有効だ。「愛こそすべて」なんて日常いっていたらあまりに単純に思える。でも、ひとたび音楽に乗れば、それはとても説得力が沸くことになる。ハービーさんの美しいまなざし、美しい心とは、もっととても重いことばなんだと思った。
その言葉の裏ずけと、その実践を彼は日々している。シンプルなカメラマン。それはすごいことだから、彼にはファンがたくさんいるのだおる。
撮影後、ハービーさんはバイクだったので、酒は飲めないのに、二次会を居酒屋でやった。11時ごろ散会、とても楽しい会だった。

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Posted by: 船橋 マンション | 2006.12.27 02:46 PM

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