九十九里海水浴場は死んだのか?
●知らなかった。九十九里、片貝海水浴場が消滅していた。
GoogleMap九十九里の地図、片貝海岸付近を、航空写真にして拡大して見ると以前の、海岸に建物が建っている様子がわかります。
僕が撮った写真は昨日の片貝海岸。
●昨日、撮影で九十九里に行った。もう30年以上も前から通っている。九十九里で撮った写真は数限りない。ところがなんだかヘンだ。いつも通っている、成東海岸の海の家、五木田丸の入り口が千錠され、入れない。いくら月曜日でも、もう6月、海開きになるというのにだ。しかたがなく片貝海岸に行くとそこは、全く違う海岸になっていた。あの、猥雑な海の家の風景はなく、夢を見ているような気になった。きっと、かつて僕は知らないが、九十九里浜はこんなだったのだと、思うぐらい一見自然な美しい風景になっていた。
一瞬ぼくは、良くなったと思った。素晴らしいと。
しかし、しかしだ。何かヘンだ。こんなんでいいんだろうか。なんでも自然に戻せばいいのだろうか。見かたを変えればあまりに殺風景。いや、海岸とは元来こういうものだ。海水浴場にするなんてことが、間違っている。しかしせっかく観光地として栄えていたところを、突然奪うことはよいことだろうか。日本中から猥雑なものが消えてゆく。風景はどこにいっても、つるりとした風景ばかりだ。なんか気持ちが悪い。
●昭和34年、市川市立国府台小学校4年生だったときの臨海学校は、片貝海岸だった。まだ貧しい時代、僕たちは、片貝小学校の体育館で雑魚寝した。片貝海岸で手をつなぎやってくる波をジャンプして遊んだ。帰りは銭湯に行った。夜は近くの小川に蛍を見に行った。闇のなか無数の蛍が飛んでいた。雑魚寝した体育館の天井に、数匹のホテルが舞った。就寝後だったのに歓声があがった。3泊4日、最終日は校庭でキャンプファイアーとフォークダンスをした。父兄がボランティアでたくさん参加した。とても楽しく、今でも鮮明に覚えている。翌年からは、近くの旅館に泊まるようになったので、印象がなく細かいことは覚えていない。
●千葉が地元の僕は、九十九里浜が好きだ。プロになり僕はこの浜をスタジオとして使った。
まるでフランスのドービルの近くの寂れた海岸のようで、気にいっていた。
たしかに海の家として、通年利用は、不法占拠だといわれていたことは知っていた。でもそんな海の家もずいぶん利用した。特にシーズン以外も開いている、海の家は撮影拠点としては、最高だった。はなやかな湘南海岸とは違う風情が好きだからだ。
バラック、最近はバラっクとはいえない立派な海の家もあったが、シーズンをはずれるととてもわびしく、写真としては最高だった。
●もちろん既得権で、横暴に営業する店もあった。そんな店には寄りつかないからいいとして、でも昔から日本の海の家のありかたに疑問はあった。もっとどうにかならないものか。ここまで放置されたのは、自治体、行政の怠慢だろう。だから一度リセットする意味での、強制撤去はしかたがないと思う。
しかし、このまままた、放置すればよいとは思えない。自然と人間をいかに巧く共生させるかが一番で、海岸にただ駐車場を作ればいいってものじゃないと思う。シャワーもない。トイレもない。そういうものを作ってから、撤去してほしい。そしてきちんとしたルール、漁協だけの既得権ではなく、海水浴場をどうしたら民主的に美しく再生できるのか、話し合う必要があると思う。
正直、今、九十九里海水浴場は死んでいる。
たしかに、九十九里浜は蘇った。
しかし何かがヘンだ。
●九十九里浜は、ある意味特殊な場所だ。関東では一番といっていいぐらい貧しい土地だった。海は、かつては地引網などのほそぼそとした漁業の海だったのだろう。なにしろ、太平洋に直接面していて、波が高く、高い波も浜の形状からサーフィンに向いているとはいえない。ボディーサーフィンにも不向きだ。泳ぐことは危険で絶対にできない。いいとこ、波打ち際で遊ぶぐらいだ。だから海水浴場としては不向きだ。それでも栄えたのは、ただ広い砂浜があるからだ。ただ眺めているには気持ちがいい。そのため、海の家は砂浜に進出した。海の家がたくさんできたからこそ、片貝海岸は栄えたともいえる。それが自然に帰ってしまえば、観光に不向きな海岸にもどる。農業にもいまや漁業にも不向きなこの貧しい土地は、自然に戻ればそれでいいというならば、護岸もすべてやめて自然に戻せばいい。あたり一面砂丘化すればいいことだ。しかしここには、もう何十年も、住んでいる人がいて、町がある。
しかも砂の被害はすさまじい。昨日は、風が強くどの海岸も砂嵐状態だった。何もなくなればいいってものじゃない。日本の海水浴場はひとつの風物だ。皆海外の海水浴場みたいになったら、味気ない。でもそうなるんだろうな。ずいぶん前から遊歩道や、自転車道をつくったが、すっかり砂にうずもれている。
●僕なりの解決策は、夏の期間、6月末から7,8月、9月初めの間、店を開きたい人を公募する。観光目的なのだから、自治体が、プレハブの建物を設置して、解体する。(いまやプレハブはいろいろなデザインが可能だ)もちろんデザインも公募する。当然、トイレ、更衣室、シャワーなどは、きちんとしたものを常設設置する。管理は運営委員会みたいなものを作ればいいんじゃないの。せっかくリセットしたんだから、全国に先駆けて、モデル、海の家を作ってほしい。
↓かつての片貝海岸を知っている人は、この風景をみたら驚くだろう。今年の夏はどうなるのだか。お茶を飲むところを探すのも大変だった。
関連
●千葉日報
●九十九里浜については、ちょっと理解不能な記事。強制撤去後、観光客が増えたってどこの海岸のことだろう?。
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Comments
本当ですか?僕も千葉出身なので九十九里には良く行きました。高校時代にはバスで競歩大会に行きましたし、車の免許を取ってからはドライブに行ったものです。環境問題のために何もかも撤去してしまったのでしょうか?それとも、少子化で若者や家族連れが急速に減少して採算がとれなくなって商売にならなくなったのでしょうか?何れにしても驚きました。近いうちに見に行ってみようと思います。
Posted by: 漂流者 | 2007.05.29 05:23 PM