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2007.06.26

伝説のスタイリスト高橋靖子yaccoさんの本

先日、原宿のKDDIデザインスタジオのオープンスペースで、スタイリスト高橋靖子さん(Yacco)さんのトークショーがあった。メールをもらっていたので友人と見に行った。ゲストにも興味があったからだ。そのゲストは樹木希林の娘でありモッくんの奥さん、最近映画「東京タワー」にも出演した女優でもある内田也哉子と、ハワイ島の古い映画館で働いたときのことを書いた「ホノカアボーイ」という素敵な本の作者、吉田玲雄だ。
トークショーの内容は、子供時代、原宿のアメリカンスクールに通っていた、也哉子さんと玲雄さんの思い出話だった。途中なんだかわからないが怜雄さんが、プロポーズする場面があったりで、冷房が効きすぎで寒かったけれど、たっぷり2時間楽しめた。
Yaccoさんこと、高橋靖子は、日本で最初にスタイリストという職業を、税務署に届けた人だ。ぼくより10歳近く先輩だけど、それ以上に写真撮影業界では、ずっとずっと大先輩、現代の日本の広告写真やファッション写真の創世記から活躍している、カリスマスタイリスト、スーパー女子(?)だ。いやいまでも現役のスーパー女子なのだ。
彼女の経歴は、あまりに華々しすぎて嫉妬さえ感じない。茨城の写真屋の娘のサクセスストーリー、その行動力は有名で、いや僕がフリーになった1975年にはすでにスタイリストとして大先生であり有名だったので、反発していたぐらいだ。
きちんと一緒に仕事したのは、70年代後半だったらろうか。コーセー化粧品の夏のキャンペーンの撮影で10日間ぐらいサイパンに一緒したときだ。連日天気が悪く、それでもモデルたちは天気にかかわらず毎日朝3時ごろかから、メークの下地、そしてメークと準備をして、僕とアートディレクターは5時ごろ起こされ、撮影するかどうか、判断した。撮影は基本的に早朝と夕方だったので、天気の悪い日は一日ホテルのテラスで時間をつぶした。僕は成田で買った、半村良のもうタイトルは忘れたが、ちょっとエッチなぶあつい文庫を読んでいた。するとヤッコさんが、読み終わったら読ませてという。
「え?ちょっとえぐい本ですよ」
「そういうの好きよ」
僕は大先輩のなので、それまでちょっと距離を持っていたが、その反応で大好きになった。
感想も、とても面白かったという。Yaccoさんは悪食だ。なんでも吸収する。その野次馬根性、好奇心の強い女、あまりに自然体、そしておっちょこちょい。ミーハー。話していると、この業界の大先輩だなんて思えなくなる。女子と書いたが、今でも現役の女の子だ。
尋常じゃない粘り強さ、行動力と、すばやさは、誰にも真似できない。彼女のキャリアはあまりすごすぎて、正直スーパーレディのような、面倒くささ、うさんくささを感じるところだが、本物のyaccoさんはそんなところが、微塵もない。
実は、僕はyaccoさんとはその後あまり仕事をしていない。そのかわり、彼女の本にもでてくる、yaccoさんのアシスタントだった、中村のんとはずっと仕事をしている。yaccoさんとは仕事をしなくても、彼女の精神とはずっと一緒だったわけだ。
yaccoさんの最新作の本「わたしに拍手 yacco pati pati」が出版された。まだそれは読んでいないが、まずは
●「表参道のヤッコさん yacco70‘s」を読んだ。
Yaccocover

いや、もうこれは、スタイリスト、ヘアメイク、デザイナー、そしてカメラマンのバイブルだ。60年代から70年代のファッションや広告の業界は、時代の最先端だった。
彼らはとてもカジュアルで、かっこよく、すべての仕事は、新しく編みだされていた。この時代の仕事は「発明」なのだ。仕事のやりかたさえ、決まっていない。それはとてもうらやましい時代だ。前に誰もいない。風を切り、波を越え、山を登り、しかも徒手空拳。
でもある意味とてもうらやましい時代だ。僕が仕事を始めた70年代中盤にはすっかりこの業界は整っていた。整いすぎて、息苦しいぐらいだった。仕事はくるし、するが、どこかもうすっかりレールが敷かれている気分だった。もちろんまだ未開拓な分野、それこそ篠山紀信が切りひらいた男性誌には鉱脈があった。そしてなんといっても、広告やファッション写真はレールは敷かれたが、そこを疾走するのは、僕たちの世代だった。
その後、バブルになり、崩壊し、一度この分野(ビジュアル)は壊滅したといっていい。いや、もちろん、ビジネスという面ではしっかり、生き延びているし、どこかではしこたま儲けている連中もいるだろう。しかし、内容という面ではさむざむしい。大手出版社はあがくように利益追求、あんなに楽しかったファッション写真は、そして写真家はファッションのリーダーではなくファッションビジネスの下僕になりそうだ。もちろん一部の小さな出版は新しい提案をしている。そこに光がある。今は劇的に変わりつつある時だと思う。
そういう意味で、yaccoさんが仕事を始めたときと同じように、何ががこれから起きる時代だと思う。
プレゼンテーションをすれば、あれはだめ、これはだめ、そんなの売れない、儲からない、と言われる時代はある意味、価値観の転換期だ。それには、新しい仕事のやり方を発明する時なのかなと思う。それは世代の問題じゃない。そういう意識をもつ才能こそが大切なのだ。
yaccoさんの本は、過去の原宿を懐かしむ本じゃない。今、これから何をするかの、啓蒙書、アイデアの本じゃないかと思う。

●7月17日(火)~30日(月)まで、写真展「GXトラベラー ベトナム・ニッポン」が開催されます。それのDMです。
クリックすると少し大きくなります。
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●ただ今、全国書店で写真・文の本「ベトナムGXトラベラー」が発売中です
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NEWS
写真展「GXトラベラーベトナム・ニッポン開催予定です!

7月17日(火)より、7月30日(月)(会期中無休)まで、御茶ノ水にできた、ギャラリーバウハウスにて、今回の本の写真のほか、GX100及び、GRDigitalで撮った東京の写真で、写真展を開催します。

●僕の GX100関係過去BLOG TEXT&PHOTO
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GX100開発秘話

GX100につていの過去BLOG

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Comments

はじめまして。かふあと申します。
YACCOさんの本を早速、拝見させて頂こうと思います。

横木さんの本は私がカメラを始めた二か月前に、初めて手にした本でした。おかげで、カメラが大好きになりました。ありがとうございます。

Posted by: かふあ | 2007.06.29 04:00 AM

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