驚き!HARUKI写真展 キヤノンギャラリー銀座
●HARUKI写真展「普通の人々」銀座Canonギャラリー
●銀座CanonGallery
7月12日(木)13日(金)14日(土)17日(火)18日(水)・・・日、月は休み。
たった5日間の写真展。
am10時~pm7時
「普通の人々の、少しも普通ではない写真」
●今日12日から、友人の写真家HARUKIの写真展が、銀座キヤノンギャラリーで開催される。それの手伝いに行った。彼の「普通の人々」シリーズは、以前から知っていたが、こうやって大判に伸ばし、全貌の一部だとしても目の当たりにして、ちょっとショックを受けた。
「普通の人々」という一けん、ありふれたタイトルの写真は、実はひとつも「普通の人」ではない、人たちの写真だった。かれこれ20年間彼が撮り続けてきた写真は、奇をてらうでもなく、流行でもなく、とてもストレートなポートレイト群だ。この写真の始まりは、彼のTEXTにもあるとおり、自分の、今はなき母親を、瀬戸内海の大島まで撮った写真から始まっている。そしてその後、世界中の普通の人々を求めて彼は旅をする。
20年にわたった写真は、最新のEOS5Dで撮った写真以外は、当然さまざまなカメラ、さまざまなフィルムを使っている。HARUKIの過剰さは、その一葉、一葉の写真にさりげなく表現されている。なによりも、そのポートレイト写真家としての資質に圧倒される。今年一番、いやキヤノンギャラリーOPEN以来、一番の写真展だと思う。これは僕の友達だからではなく、本当に圧倒される写真世界、是非度肝を抜かれに、見て欲しい。彼の、写真展のTEXT全文を下に紹介する。
●展示している写真は1987年から約20年間撮り続けてきた”旅先で出逢った人たちの一期一会のポートレート” 作品群からの抜粋で、全体のほんの一部です。いわゆるモデルじゃなく、タレントや有名人でもない、世界各国でごく当たり前のその人なりの生活をしている市井の人たちを撮らせて頂いた写真です。タイトルの「普通の人びと」というと何だか高いところから人々を見つめてるように勘違いされる事もあるが、ボクのいう「普通」とは「平均的レベル」とかではなく、「すべての」「誰でも」「何処でも」という意味です。「普通」の定義など難しくてむしろそれさえも「普通」では無いのかも知れません。いろんな国や土地風土の中で様々な職業や宗教、思想を持った人びとが作り上げてるこの星に生きている人間のすべてが普通なのか、或いはその逆なのか。そこには何も基準がないので確かめようもありません。
●1987年夏の終わり、ボクは故郷の両親や兄とともに瀬戸内海の島にいました。従兄弟の結婚式に出席するために親戚一同が集ったのです。ここは子供の頃から夏休みなどに広島からひとりで電車とフェリーを乗り継ぎ泊まりがけで遊びに行っていた場所なので十数年ぶりに訪れても我が町のように感じました。中学生の時には将来カメラマンになるんだと云って成績アップと引き替え条件に(笑)買ってもらったキヤノンFTbを使い、この島で撮った写真をコンテストに出したりもしてました。我が家は幼い頃から家族で出掛けたことが一度もない家庭だったので、その日のボクは少し興奮気味で久しぶりに集まった親戚の記念写真を撮ったり、式の前後のあいた時間に島を散歩しながら何人か出逢った人たちの写真を撮らせてもらいました。翌年母は脳梗塞で倒れて以来は半身不随になり21世紀を迎えた年に帰らぬ人となったので、ボクにとってはこの日の写真が母をちゃんと撮った最初で最後の写真になりました。その時の1枚がここに展示されてる数少ない日本人の写真、砂浜に立つ晴れ着の母の写真です。
● 小さな旅から東京へ帰り、現像した写真を眺めてるうちにこの写真に写ってる人が母だとか誰だという事とは別の意味でこの写真から「日本人」を強く感じてきて、他の町でも撮ってみようとこのシリーズをスタート。以来、仕事で地方や海外ロケへ行く時は勿論、都内でブラブラする時にも意識して仕事用とは別のカメラを持ち歩くようになりました。北には北の、南には南の顔や体型、生き方や服装があります。とにかくいろんな場所でいろんな人びとの顔を撮りまくりました。ちょうどその頃は雑誌の仕事で毎週のようなロケがあったので2年もしない間に日本各地の殆どの都道府県を回った頃、視点を海外へ向け手始めにフランス、スイス、スペイン、アンドラを電車で回りながら旅に出たのがこのシリーズでの最初の海外撮影で1989年でした。以来、公私併せて約40ヶ国を回ってきました。
● 撮影の旅では様々な事件に遭遇します。カメラや現金を盗まれそうになったこともあれば、実際に撮影済みフィルムを取り上げられたこともありました。ある国ではスパイ容疑で軟禁され尋問を受けたこともありますし、目の前に銃口を突きつけられたことは2度あります。逆に信じられないほど優しい人たちに出逢うことも度々ありました。どう考えてもボクより貧しいだろう人たちから食事やお酒をご馳走になったことはこれまで何度もありますし、ホテルが見つからないで荷物を持って歩き回ってる雨の夜中に通りがかりの車に拾われて自宅へ泊めてもらったことも。96年の東欧の旅では途中でカメラが壊れました。チェコから入りスロバキアを回り、ハンガリー国境の町へ入った日にシャッターの異常に気付きました。現地で知り合った若者がトラバントという旧東ドイツ製のポンコツ車に乗せてくれ、片道3時間かけてカメラ修理屋があるだろうと首都ブダペストまで行き言葉のわからないボクのために一生懸命に探してくれました。それまで2か国を約2週間かけて回りながら撮影したハズの何十人もの画像は記憶の片隅と撮影ノートにしか残っていませんが、感激の体験だけはずっと忘れられない良い思い出になりました。
● この旅をしてきて、世界には本当にいろんな人がいることを実感しています。これらすべてがまさに「普通の人びと」の代表なのです。写真は想像では映りません。そこへ行きだれかに出逢わなければ成り立たないものなので、体力的精神的にいつまで続けられるのかはわかりませんが予測出来ない”旅”はいつもボクの何かに刺激を与えてくれ解放させてくれます。また旅に出て、自分にとって非日常の状況下で出逢った人たちとの一瞬の何かを捉えられれば良いのですが。
●テクニカルな事をほんの少しだけ書くと、当初このシリーズは銀塩B&Wフィルムでスタートし、その後はネガカラーフィルムで撮影し全て自家プリントをしていましたが最近ではデジタルのEOS 5Dを使いだしてからは暗室から解放されてずいぶん楽になりました。デジタルのレンズは殆どがEF 50/1.4か35/1.4 L。この中に1カットのみ24/1.4 Lも使っています。このシリーズはすべて三脚なしノーフラッシュ。そこにある光のみで撮影しているので暗い店内や夜道での撮影時には明るいレンズが必須です。外国で飲み屋で出逢った人を撮影する機会も多いので、解放絞りでシャープな写真にするにはどうしても単焦点大口径になってしまいます。撮影を終えてホテルへの帰り道は重いレンズが入ったバッグが辛いのが難点ですが(笑)。
●今回の個展は長いスパンでの撮影ゆえ作品総数300点以上からのセレクトという事や、フィルム作品とデジタル作品の混合という点でどう見せるかでギリギリまで悩みました。解決策として作品数を大幅に削り、すべてをいったんデジタル化しての大型インクジェットプリンター出力での展示という方法になりました。キヤノン最新の大型プリンターiPF9000を使ってHahnemuhle Photo Ragというちょっと特殊な用紙での出力は昔の無光沢印画紙にも近い表現をしています。
HARUKIプロフィール
1959年:広島市生まれ
1976年:個展「FIRST」ドイフォトギャラリー、広島
1978年:広島工業大学付属工業高校デザイン科卒業
1980年:個展「あるいは内なる光景」アートスペース貘、福岡
1981年:個展「Half Time」アートスペース貘、福岡
1982年:九州産業大学芸術学部写真学科卒業、以後12月まで同大学研究室在籍
1983年:1月3日上京、飯倉スタジオを経て、以後ポートレートを中心に広告・雑誌・音楽媒体などでフリーランスで活動開始
1987年:第35回朝日広告賞グループ入選及び表現技術賞(個人)受賞。「朝日広告賞展」資生堂ザギンザ、東京他
1988年:アートワークス主催「PEACE by PIECE」展参加、銀座グラフィックギャラリー、コニカプラザ・東京 他
アートワークスでの出品作品がニューヨーク近代美術館(MOMA)に共同制作作品永久保存
1990年:個展「FRAGILE」吉祥寺パルコギャラリー、青山Club-MIX、調布パルコ、他 ビデオ映像作品も同時発表
1991年:第3回パルコ期待される若手写真家展「Parco Promissing Photographer's」選出、渋谷パルコギャラリー、東京 他
個展「普通の人びと」シティーライツギャラリー東京、他
1992年:個展「普通の人びと」調布パルコ 他
1994年:CD-Rom「100 JAPANESE PHOTOGRAPHERS 1993」普通の人びと作品収録
1997年: 神戸ファッション美術館に「普通の人びと」シリーズ作品オリジナルプリント永久保存
2005年:個展「Tokyo Girls ♀ 彼女たちの居場所。」渋谷ギャラリー・ルデコ
2006年:個展「Tokyo Girls ♀ 彼女たちの居場所。」京都ギャラリー、京都
●キヤノンの最新のプリンターの実力、そしてマットのペーパーも僕は惹かれた。そういうテクニカルな面も興味深いし、大判プリント50数点の迫力は、見る価値あり。短い開催期間、お見逃しのないように。
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Comments
横木様。
素早いご教授、本当にありがとうございます。
早速活用させて頂きます。
蛇足ですが、私の日仏学館での写真展が始まりました。
日仏学館さんのご尽力のため、私は搬入しただけで未だ展示を見てませんので(台風もそれたようなので)早速明日にでも見に行って参ります。
Posted by: PhotoArt Plan | 2007.07.14 07:32 PM
今回の僕の写真展、GX100をA0,1mx1.4サイズにプリントしたのは、エプソンの9500で出力しました。それは、恵比寿にあるプレゼンハウスでした。http://www.phtoo.com/
地方の場合は、エプソンに直接聞くのもよいでしょう。
Posted by: alaoyokogi | 2007.07.14 11:19 AM
初めまして。楽しみにいつも拝見させて頂いております。
HARUKIさんの「普通の人々」非常に楽しみですねえ。
やはり人間性が現れるんでしょうねえ。
ハード的にも非常に関心が有ります。圧倒されてきます。
福岡Canonでは、8月6日(月)〜8月17日(金)の予定になっていますが、なんとしても時間の都合を付けてじっくりと観たいと考えております。
ところで、私も秋に個展を予定しておりまして、内2点程をモノクロ、大判(B1)で展示したいと計画中です。
なかなかいい出力業者が見つからず苦戦している所なんですが、そこで横木さんにご教授して頂ければ大変有り難いのですが・・・
私としては「PX-P/K3インク」で出力したいと思ってるわけなんですが、適当なお勧め業者がございませんでしょうか?
お手数おかけしますが宜しくお願い致します。
Posted by: PhotoArt Plan | 2007.07.14 09:50 AM
kusano koutaさま
ありがとうございます。bauhausの写真展、是非僕が在廊中に見に来てください。そのスケジュール、BLOGにUPします。
Harukiの写真展も凄いので是非ご覧を。
Posted by: alaoyokogi | 2007.07.13 12:02 PM
初めまして。
いつもこちらのブログの更新を楽しみにしています。
「ベトナムGXトラベラー」はもちろん、最近は「熱を食む、裸の果実」も読まさせていただきました。
ベトナムを、写真ではなく文章でも味わってみたかったからです。
先月、横木さんのこちらのブログでGXの存在を知り、ど素人ながらも肌身欠かさず持ち歩き、最近は散歩が楽しくて仕方ありません。
本業はあくまで俳優なのですが、趣味も交えブログで文章や写真も載せています。
週末はちょっと行けそうにないのですが、個展も是非、伺える日を楽しみにしています。
Posted by: kusano kouta | 2007.07.12 10:43 PM