黄金町プロジェクト、映画「世界はときどき美しい」
●先日の写真展のとき、会場で俳優の草野康太と知り合った。
彼がこのサイトに挑発されて、すぐにGX100を買ったという縁だ。
いや、そのはるか以前にある偶然で、田園都市線の池尻駅まえですれ違ったことがあったが、
そのときには言葉をかわしたわけではない。一緒にいた女性と僕が知り合いだったという縁でもある。
初めて言葉をかわし、すぐに意気投合した。
今彼は、ある映画に出演していて、その映画が横浜黄金町の映画館で、
8月3日までかかっていると聞いた。
その映画はずいぶん前に評判だった映画だったことを僕は知っている。タイトルは「世界はときどき美しい」。監督は新人の御法川修だ。
●8月3日の晩、僕はK社の週刊Gの若い編集者二人と、横浜に向かった。
映写時間は夜8:45分から。8時ごろ黄金町の駅に着いたら、草野さんが迎えに来てくれた。
駅から数分のところで、
1日から3日間のグループ写真展「~写真と詩の壁」landmarkヨコハマGXトラベラーon黄金町が開催され、
今日がその最終日でもあった。
その場所は、黄金町プロジェクトのオフィスにもなっていた。
他にも二人の写真が、二階のチョンの間跡で展示してあった。
Kouta Kusano(写真をクリックすると拡大します)
●なんとその場所に、先日なくなった映画監督アントニオーニの「欲望」のオリジ
ナルポスターが階段に、
額に入れて飾ってあった。映画館にあった、ビンテージものだ。DVDの写真は、
赤だがこの写真は背景がブルーだった。この話は、7月31日のBLOGで。
●さて、黄金町プロジェクトとは、
かつてこの街が、新宿ゴールデン街がそうだったように、
売春宿、チョンの間がひしめき合った場所だった。黒沢明の映画、「天国と地獄」で、
主人公の犯人山崎努が、ふらふらと暗黒街であるこの町をさまよったシーンがある。
決して誇張だとはいえないようだったらしい。その町が、近年一斉手入れにより掃討され、
街はゴーストタウンになった。この町をを再生しようと、立ち上がった有志たちのプロジェクトが、
黄金町プロジェクトというわけだ。
●映画「世界はときどき美しい」上映ももこのプロジェクトの一環だという。
映画館を見る前に隣の中華屋で腹ごしらえとビールを飲んだ。辛いマーボー豆腐が最高に美味だった。
「シネマ、ジャック&ベッティ」で映画は8時45分ちょうどに始まった。
全編8mmフィルムで撮られている。ネガもポジも使っているという。
8mmフィルムといっても、その省略された調子以外は、
35mmフィルムとなんら変わることなく、映画のなかに入っていけた
。クローズアップが多用された映像は、まるでスチール写真のような、
光と影をいっぱいに受け入れたやさしい、
映像fullな5つの話からなるオムニバスというかアンソロジー映画だった。
●僕の個人的な好みは、すでに世界が確立している二人のベテラン、
柄本明と松田美由紀のそれぞれのショートストーリーよりも、他の3のストーリー
、まだ完全には世界が確立していない若い俳優達のなんとも、不確実な世界観が、
とても写真的でありながら映画的なリアリティを感じた。それを引き出す、
監督の力を感じる。きっと彼は青春映画をずっととってゆくような予感がする。
●映画とは、バルトの「明るい部屋」には、こんなことが書いてある。
・・・映画は一見したところ「写真」には、ない、ある能力をそなえている。スクリーンは、
枠(フレーム)ではなくて隠れ場である。作中人物はそこから出てきて生きつづける。
目に見える部分的な視線の裏に、ある(見えない場)がつねに存在している。ところが、
立派なストゥディムを持つ写真も含めて、何千という写真を見ても、私にはそうした見えない場が
少しも感じられない。・・・・・「写真」は、・・・・彼らが外にでてこないということも意味するのだ。・・・・
御法川の映画は、まるで初期の無声映画や、
粒子の荒れたモノクロ写真のように画面の情報量はかなり省略されているのに、
そういう写真の常に「彼方」にある雰囲気ではなく、バルトのいうように、
そこに登場している作中人物が、この世のどこかに本当に存在しているかのように、思える。
それは、二人のベテラン俳優より、若い俳優達が登場するとさらに顕著に感じられる。
有名であることは、すでにその俳優の世界観が映画世界より強すぎるのかもしれない。
厳しく言えば、演技の巧さまでが、映画に写ってしまう。8mmフィルムという、
情報の少ない画像(それだけ想像力の入り込む余地がある)のほうが、
かえって、ベテラン俳優の演技が目立つのはなぜだろう。シネポエムというぐらい、
セリフが多く、そのセリフや、音がクリアーすぎることが問題なのだろうか。いや
、ある意味ベテラン二人の俳優としての世界観に、フィクションとしてのシチュエーションが負けているのかな。
ある意味写真でも似たようなことがあるかもしれない。有名人ポートレイトより、
無名の人間のほうが、
その写真の枠から飛び出てくることはないとしても、
「かつてそこにあった」者として強く感じられるからだ。
前編8mmフィルムという、一見前衛的、実験的な映画だが、
素直に映画世界に引き込まれる、意欲作。
星は★★★★
・・・・御法川監督の次回作も必ず見たいと思っている。
●「世界はときどき美しい」は、現在広島「横川シネマ」にて、絶賛上映中です。
Osam Minorikawa
●映画は、他に、監督のドキュメンタリー短編映画も上映された。
その後、黄金町プロジェクトのオフィスの隣のバー、アウトサイダーに行った。
そこは黄金町再生の象徴的バーだ。オーナーであり、バーテンダーは
、隣でグループ展にも参加していた、Satoさんだ。さまざまなことで、
地元警察と戦っているらしい。もともとは、ミュージッシャン、写真も撮る、素敵な人だ。
Bar The Outsiders Shinji Sato
●BarOutsidersで監督と話をした。今の日本の映画の現状、
特にシネコンが映画作家の思惑とはまったく違って、結局、
メジャーなものだけに収斂していっていることを嘆いてもいた。自主単館は
、ヘリ、かつての映画が斜陽といわれていた時代よりも、
上映される映画は減っているとのことだった。そういえば、
最近ヨーロッパの映画をかつてのようにやっていないなと思った。
まあそれでも、映画は巨大ビジネスとして、発展していっているが、
写真の表現はそういうものがなかなか爆発しないなあって、ちょっと寂しかった。
その後、日の出町の沖縄料理屋にゆき、その後も野毛の店の名前がたしかキネマだったかな、
酔ってさだかでないが、映画Barに行った。
VOL.002 VOL.001
NOSTALGIA DIGITAL PUNCTUM#006 BAR THE Outsiders
NOSTALGIA DIGITAL PUNCTUM #005 HINODE-CHO
NOSTALGIA DIGITAL PUNCTUM#007 Hinode-cho
NOSTALGIA DIGITAL PUNCTUM #008 Bar KINEMA
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