都写美 昭和 写真の1945-1989と鈴木理策
2007.9.15 Ebis tokyo Shabi GX100
■東京都写真美術館で開催されている、「鈴木理策 熊野 雪 桜」と「昭和 写真の1945-1989」を見てきた。目的は鈴木理策の、雪と桜だった。日本の中堅の写真作家第一弾というわけだ。内容は見てのお楽しみとして、まだ開催中なので自分の目で見てください。展示のしかたが、ボクにはちょっと権力的、権力志向だと思った。ただ、だからこそ、新作、雪と桜の空間が感動的なのだけれど、それはまるで、キューブリックの映画2001年宇宙の旅の白い部屋のごとく空虚で、決して居心地がよくない。居心地がよくないことが悪いのではなく、でもその空虚な神々しさが鈴木理策の熊野なの?と思ったしだいであります。(てっきり、雪も熊野と思い込んでいた)★★★
■次に、上の階の、「昭和 写真1945-1989」を見た。ボクはこの手の写真展はそんなに好きじゃない。写真を使ってかつてのなつかしの昭和の風俗を見せる。のだと思っていたら、全然違って、びっくりした。これは、昭和の写真ではなく、昭和の戦後の写真家の写真展だった。
もちろん、戦後の写真家が網羅されているわけじゃない。大きなウエーブだった、アンチ芸術の写真は紹介されていない。篠山紀信のような両方に渡った写真家の写真もない。基本的には、戦後の「ルポルタージュ写真家と純芸術」と呼べる、写真家の写真のダイジェスト写真展だった。
実はこれが凄かった戦後日本の写真史の、「純写真」が系統だって展示されている。
●Part1 高度成長期の風景、ドキュメンタリー写真だ。薗部澄、長野重一、田沼武能、石元泰博、臼井薫、植田正治、英伸三、田村茂、大束元、熊切圭介、秋山亮二、桑原史成、東松照明、森山大道。……後半に北井一夫の写真「三里塚」がこのジャンルに入っているのには、あれっと思ったが。森山大道、石元泰博の写真も一部あるので、これは戦後風俗を説明するためのコンセプト上の都合だった。こういうところが、ちょっと中途半端な構成だ。まあ、通常よくありえる、写真による、戦後の風俗写真のあつかいだ。有名写真家により戦後風俗を見せるのじゃなく、(それはそれで違う企画だろう)それよりきちんと、総括して見せて欲しい。
●Part2、さてここから圧巻だ----まずは、戦後派アプレゲールの写真が並んでいる。
こんなふうに、「純写真」が超ダイジェストだけれど、紹介されたことは、今まであったのだろうか。石元泰博、常盤とよ子、奈良原一高、細江英考、東松照明、川田喜久治、佐藤明、丹野章、
●Part3 ブレ、ボケ、コンポラ、私写真、高梨豊、森山大道、牛腸茂雄、柳沢信、内藤正敏、荒木経唯、田村彰英・・・
P2とP3,そこにはキラ星の写真作家達の写真が並んでいる。こんな風にダイジェストではなく、きちんと、ひとりひとりを紹介するべきだと思うけど、それにずいぶん独断でいろいろな人が抜けているが、まあ、それでも1980年代までに評価された、日本の純写真の作家達は、なんとか網羅されているようだ。
これは、絶対に若い人たちは見るべきだ。ニュープリントだと思うけど、作者のオリジナルプリントだ。
まあ、ダイジェスト版なので、欲求不満気味になるが、それでも価値があると思う。絶対に見るべき。★★★★★
★それにしても、都写美は今までだらけていた。予算がついてなかったという話だが、こういう企画、もっと深い内容で展示するべきだ。まさか丸投げじゃありませんよね。
キューレーターの勉強不足を感じる。もっと写真を普通の人たちがみても分かるように、分析し解説するべきだ。写っている時代、風俗は、写真を知らなくても、分かるだろう。でも、それぞれの写真家の考えや、コンセプトは、解説が必要だ。怠慢。おまけに、Web上の解説もお粗末。何やってるのかわからない。
そんなことぶっとぶぐらい、写真がどれも素晴らしいので、企画としては大成功、意義があります。
鈴木理策の写真展と合わせてみると、1000円だった。
The comments to this entry are closed.
Comments
写真カッコイイですね^^
昭和の写真もいいなー。
Posted by: ともっち | 2007.09.17 08:14 PM