2冊の本「ショーケン」&「不良読本」
二冊の本「ショーケン」&小説現代特別編集>「不良読本~傷だらけの天使リターンZ:魔都に天使のハンマーを」矢作俊彦etc.
●ショーケンこと、萩原健一に関係する二冊の本が出版された。
一冊目の、「ショーケン」は自伝だ。2002年暮、僕は萩原さんとマネージャー、テレビのディレクター、カメラマン、VEと岩手県にある天台寺にいた。2003年に、10数年ぶりにライブコンサートをする予定で、写真を撮り、祈願を込めて、瀬戸内寂聴さんに会うためだった。ところが、ライブのための肉体づくりに毎日数十キロ歩いていた、萩原さんは骨折してしまった。
雪深い天台寺や、スキー場が併設されている、ホテルに宿泊したが、萩原さんはずっと松葉杖をついていた。だからそのときの写真は終始機嫌の悪い顔で写っていた。檀家や初詣にあつまる寺で、紅白歌合戦と、K1を見ながら、除夜の鐘を天台寺で聞いた。そのころになると、雪の境内はひとでいっぱいになった。
その翌日の晩だったろうか、ちょっといろいろトラブルがあり、僕はなぜか、ホテルの萩原さんのスイートで4時間ぐらい二人だけで向かい合っていた。僕は直接トラブルには関係なかったので、二人でさまざまな話をした。なにより僕はこれさいわいとさまざまな質問をした。かなり不機嫌だったが、萩原さんはかなり答えてくれた。
今回の自伝にある、黒沢明、「影武者」のおりの、勝新太郎降板の真相も聞いた。撮影のエピソードなど、萩原さんは一見寡黙だけれど、話し出すと止まらないぐらいおしゃべりになる。俳優だ、当然語り口がうまく、こんな話一人で聞いていていいのか、とさえ思った。実際は、自伝には書けないようなことは、たくさんある。
萩原さんは、僕より正確に言えば一つ下だ。でも、話をしていて、そんな気がぜんぜんしない。それは十代から、歌手として、そして二十代前半には、俳優として一線を走り抜けた天才児の持つ、特別な時間割がそうさせているのだろう。
ショーケンはただの役者じゃなかった。太陽にほえろ、傷だらけの天使では、ディレクターのような才能も爆発している。彼のつきあっている人間は、ほとんど全員が年上だった。自伝でもでてくる俳優たちは全員先輩だ。でも皆ショーケンを、年下だと思っていない。いや、精神的には、年上のようにさえ扱っている。
萩原さんの、話をまとめたら面白いな、とずいぶん前から思っていたが、それがようやく、講談社からでた。読んでいて、彼の演技にたいする、心構え、打ち込みよう、やはり本物の俳優なんだな、と思う。
ワイドショーで女性遍歴うんぬんとあったが、一度は書かれていることなので、スキャンダルではない。それより、そのときの素直な気持ちが語られていて面白かった。
僕は、萩原さんと、2002年まで会ったことがなかった。ショーケンが、絶好調のころは、僕はジュリーこと沢田研二のジャケットを、多く撮っていたので、ショーケンは意識してたが、接点はないと思っていた。
ジュリーがその後、歌手として一等賞を目指すより、自分に正直に生きるようになったのは、きっとショーケンの影響かなと思っていた。それぐらいあの頃のショーケンは輝いていた。そのショーケンのライバルは、沢田研二だ。
たしか1974年、アシスタント時代、夏休みだったろうか、ガールフレンドと京都に行ったとき、祇園あたりで、オープンのモーガンに乗ったショーケンとその後結婚する、モデルの小泉一十三を見かけた。スターだった。小泉一十三といえば、立木さんの8X10のモノクロで撮ったヌード写真が有名だ。昔の銀座ニコンサロンでその写真展を見た。完璧なプロポーション。グレースケリーのような品のある女性だった。
そんな女性とつきあっている、ショーケンはあの時代、一番かっこいい男だった。
2003年のコンサートは大成功だった。声は往年のように出なかったが、もりあがった。歌う意味を、かなり悩んでいた萩原さんは、またコンサーをすると張り切っていた。
そして、例の恐喝未遂事件。酔っておどかして、恐喝か。それも同じ業界の、萩原健一をかなり知っている人間との事件。良く立件できたなと驚くが、正直に生きているショーケンは、ええかっこしいだし、権力には嫌われるタイプだ。
そんな「ショウーケン」のエピローグには、~毎週日曜はアイロンかけの日だった。変な感じだぜ。ショーケンが正座しちゃってよ、おかまみたいにアイロンかけて~・・・・・、と書いてある。
13章、事件の扉に、僕の撮った写真が使われている。雨がそぼふる町で、革ジャンと皮のカバンを持ったショーケンが、ひとり歩いている。その写真についた、コピー「おれは、ひとりぼっちになった」・・・・。その写真を見て僕は、胸がつまった。そしてショーケンの第2幕が始まる、で終わる。
この本は、ただの俳優の告白本じゃない。萩原健一の、叫びだ。男だったら読む価値がある。丁寧に作られた本だ。
●2冊目は、まるでその本に便乗したような、直接はショーケンに関係ないが「不良読本」魔都に天使のハンマーを
実はこの本は、「ショーケン」の本とは、関係ないところでできあがっている。表紙にショーケンが使われているが、それは「傷だらけの天使」の主人公がショーケンだったからだ。
矢作俊彦が、「傷だらけの天使」を下敷きにした小説を書こうとしていたのは、昨年のいつごろだろうか。本来は小説現代別冊として、昨年末には出る予定だった。
それが同じ講談社で、「ショーケン」の自伝がでるというので、それにあわせて、発売を遅らせることになった。タイミングが合うというのは、こういうことだ。
ところが、この本のメイン、矢作俊彦の傷だらけの天使リターンズ「魔都の天使にハンマーを」が、どんどん長くなり、結局は600枚の大作になって、「ショーケン」の自伝より発売が遅くなってしまった。まあ、ちょっとの差だから問題なかったが。この本は、明日3月28日発売だ。
この本の表紙のショーケンはもちろん、裏表紙の花の写真、そのほか中の写真など、全て僕が撮ったものだ。
「ホテルパシフィック」
そして何より、この本に、僕は小説を発表している。
タイトルは「ホテルパシフィック」だ。
かつて湘南海岸にランドマーク的にそびえていた、パシフィクホテル茅ヶ崎だ。
小説の内容は1971年の初夏のある日曜日の話だ。
別冊全体のコンセプトは「不良読本」だが、僕の小説の主人公は全然不良ではない。
もっとも、まわりは不良かもしれないが。これはカメラマン志望の青年の青春グラフィティです。
120枚ぐらい書いたので、立ち読みはきついかもしれないので、是非どこかで読んでください。
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Comments
はじめまして。横木さんの写真、ずっと意識しています。横木さんの撮る「肖像画」のようなショーケンはカッコいいです。
『不良読本』の表紙は、2003年発売の2枚のアルバムジャケットと同じときの物のようですね。ライヴの時の横顔の写真は迫力ありました。
是非今度、明るい笑顔のショーケンも撮ってください。
Posted by: showken-fun | 2008.04.01 02:05 PM
勉強します!!
Posted by: HARUKI | 2008.03.31 11:51 AM