« 本日4日、5日写真展ワークショップ仙台 | Main | 本日BSジャパン「写真家たちの日本紀行」横木安良夫 益田市 »

2009.07.29

写真家たちの日本紀行 8月8日、15日 横木安良夫

●明日から、約2週間、ドイツ、イタリアにロケ。内容はまだ明かすことができないけれど、とても興味深い仕事。
でも、なんの準備もしていない。昼間は、打ち合わせなどがあるし、明日は朝8時半ここを出発。夜寝る時間があるのだろうか。まあ、飛行機のなかで寝ればいいわけだから、なんて余裕こいているけど。
●さて、来月、8月8日と15日、二日に渡って、Canonが提供している、「写真家たちの日本紀行」に出演している。BSジャパンだから、誰でもが見れるわけじゃないのだろう。日本の写真家が、未来に残したい情景を求めて、全国で写真を撮るといった、とても興味深い内容の番組だ。これまでもそうそうたる写真家が日本の情景を撮っている。
放送スケジュール→ ON AIR INFORMATION

●横木安良夫 島根県益田市の旅 

Meiseidote
明誠高校前の土手
Takatsugawa
高津川河口
Masudaeki
益田駅周辺
Izumi
IZUMI地区
●この番組は、日本の美しい情景を未来に残すといったコンセプトだ。
ただ、僕は美しい風景とは、現代的な人工物を排除したものばかりだとは、思っていない。
今新しいものも、10年、20年たてば確実に古くなり、50年もたてば、それは風景のなかになじんでしまう。
今のおさない子供たちは、大人になったとき、確実に今、できたばかりの新しいものが、記憶になり、自分にとってのかけがえのない情景になるはずだからだ。
例えば、江戸時代、いや明治時代でもいいだろ。たとえば湘南海岸にたち、まだ海岸の国道もない時代のことを想像すれば、自然な美しい砂浜、松林があったはずだ。でも、それは今に生きる僕たちには、見ることができない。残念ながら写真もほとんどない。でも、国道ができ、砂防林ができ、今や防波堤まであるその風景は、なんだかんだいっても、僕らの風景として受け入れざるをえない。そうしなければ、人間が存在しない、原始の風景がだけが美しいことになってしまうからだ。
●人工物 たしかに、無意味な日本全国、島々までの護岸工事。国家とゼネコンの一大プロジェクト。それが日本の海岸線を破壊したことはたしかだ。僕はそれを肯定するきは、さらさらない。でも、現実としてその風景を、写真家としては、受け入れざるをえない。そこにある種の「美」をみつけることも、写真家の仕事、いやそうではなく、現実世界を肯定するといった、今に生きる人間の役割かもしれないと思っている。
最近の僕のテーマは「なぜか心に残る、ありふれた光景」だ。

●さて、なぜ僕が、島根県の益田市を選んだか?それは、1月にRICOHのワークショップで出会った、女優さんとしりあったことによる。RICOHのワークショップの後、どういうわけか、AYPCという僕のWORKSHOPが、毎月、行われている。まだ、OPENになってないが、今のところ30人ぐらいて、常時15人から20人が参加している。そのワークショップに続けて、その女優、七咲友梨さんも参加している。
彼女の所属している事務所は、かつて懇意にしていて、そこの社長やマネージャーを知っていたので、親近感を持ったこともある。その彼女の出身が島根県益田市だった。
●島根県といえば、どこにあるのだろう。全国を巡った僕にとっても、そのなかの益田市はぽっかりと空白の場所だった。まあ、島根といえば、鳥取砂丘だよね、なんて冗談もあるけど、やはり宍道湖、出雲大社だろう。それでおしまい、といったところだ。
●僕はかつて、30年以上もまえ、フリーになりたてのころ、中古のスカイラインGTで関西から山陰をひたすらドライブしたことがある。写真も撮らず、ひたすら走った。そのルートからいえば益田市も通ったはずだ。でもまったくおぼえていない。ただそのとき、それは山陰のどのあたりか覚えていないが、そこになぜかアメリカを感じていた。
●というのは、いまでこそ日本のありふれた風景、広い駐車場とコンビニといった、日本全国にありふれているけど、ほんの3,40年まえまでは、広い駐車場をもった商店なんて、国道の長距離トラックのためのドライブインぐらいしかなかった。
それが、山陰のどこかない、アメリカの田舎町にあるような、そんな風景があったのだ。すでに僕はそのとき、何度もアメリカに行っていたので、その風景を見て、ふうんと思っただけで、特別写真に撮りたいと思ったわけじゃない。鉄道の発達していない、山陰地方は、なにしろ益田は今でも単線だ。しかも1時間に一本といったぐあい。JRではなく、国鉄時代ならいざしらず、それでもこのあたりは、車がなくては不便だったのだろう。すでに30年以上まえから、クルマ社会だったのかもしれない。商店のまえの広々とした駐車場。・・・・。
あの頃、コンビニがなかった。ファミレスもなかった。東京から白馬にスキーにクルマで行くとき、夜中走るのだけれど、店はどこもあいていない。空いていたとしてもスナックでバカ高いカレーやピラフがあるぐらいだった。コンビニのない生活を想像してみると、それがかつての日本の情景だ。不便だった。
●何を書いているのか、わからなくなったが、とにかく、
想像することのできない、町、益田に興味を持ち、調べた。すると、昔読んだ、梅原猛の「水底の歌」という柿本人麻呂の、死んだ場所ではないか。それに雪舟が住んだ町。日本に誇る美しい水質の高津川、などなど、あれ、この町って、歴史のある素晴らしいところなんだ、とさらに興味がわき、この番組に出演するにあたって、益田市で撮りたいと提案すると、そこで、20分の番組を2つ作るのは難しいのではないかと、まず言われた。それを強引に説得して、撮ることにした。
●その成果は、番組を見てもらうとして、他の写真家たちとはちょっと違った内容になったと思う。8月8日は、僕はロケ中で見ることができないが、是非ごらんください。
●実は、二か所ほど、撮影シーンがカットになってしまった。
それは、益田駅から数駅のひなびた無人駅で、ちゃんと撮影許可は撮っていたものの、一両のディーゼルカーが駅を出発したあと、僕はが突然ホームからおりて写真を撮ったことが問題になった。
指摘されたわけではなく、その旨を、撮影後、申告したらJRは、そんな許可はだしていないと硬化して、いっさいJRのシーンを不使用にとの通達があり、残念ながら他の駅のシーンも使えず涙をのんだ。
たしかに、公共の電波に線路からのシーンは不適切かもしれないので、使えないのはしょうがないとしても、僕もテレビでは不適切だなとは思っていた。
だからといって全てのJRのシーンを使わせないとは、ちょっとふに落ちない。
問題はもっと違うところにあるのかもしれないが、まあ、映像という、写真に比べれば公共性の高いメディアは、写真という、個人のレベルの表現として動いているものとは、比較できないぐらい、きちんとしてなくてはならないのだと痛感した。
でも、誰もいない無人駅のホームから何度も線路に降りたことのある僕は、反射的なもので、軽率とはいえ、「サガ」かもしれないと、居直ってみた。
●まあ、でも、ちゃんとした素晴らしい番組なので、是非、ご覧ください。僕のおちつきのない、撮影風景が満載だとおもいます。

毎週土曜日、夜7時半から8時 BSジャパン


|

« 本日4日、5日写真展ワークショップ仙台 | Main | 本日BSジャパン「写真家たちの日本紀行」横木安良夫 益田市 »

Comments

先週、今週と横木さんの写真家たちの日本紀行拝見し録画もしました。横木さんは、僕の大好きな写真家です。先週の風景も素晴らしいと思いますが、やはり横木さんと言うと、人物画が素晴らしい!ノーファインダー撮影はいいですね。未来に残したい情景の園児は最高です!僕も、横木さんと同じ被写体を撮影するので、お盆の残りの休みである明日、能登の港のある風景と人物を撮影して来ます。横木さん頑張れ!

Posted by: たけちゃん | 2009.08.15 08:56 PM

The comments to this entry are closed.

« 本日4日、5日写真展ワークショップ仙台 | Main | 本日BSジャパン「写真家たちの日本紀行」横木安良夫 益田市 »